1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62300003
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
掛谷 誠 弘前大学, 人文学部, 教授 (30020142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧田 肇 弘前大学, 教養部, 教授 (80004464)
北村 光二 弘前大学, 人文学部, 助教授 (20161490)
池上 良正 弘前大学, 人文学部, 助教授 (60122925)
中村 徹 筑波大学, 農林学系, 助手 (60015881)
糸賀 黎 筑波大学, 農林学系, 助教授 (40114037)
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Keywords | 白神山地 / ブナ帯 / 基層文化 / 生態史 / 崩壊地形 / 豪雪地帯 / マタギ村 |
Research Abstract |
白神山地の主稜線部や,大川・赤石川流域を中心に,広域にわたって地形・地すべり・崩壊地・植生の調査を進めるとともに, 青森県側の西目屋村に焦点を定め, 集中的な村落調査を実施した. 白神山地は日本でも有数の地殻変動地帯であり, ほぼ200万年にわたって隆起と浸食をくりかえしてきたと推定しうる地質・地形学的な資料を収積しつつある. それが, 現地調査や航空写真解析などによって確認された多様で高密度な地すべり・崩壊地形と密接な関係にあることが立証されつつある. このような地質・地形要因と, 青森県内でも顕著な豪雪地帯であるという気候要因もあって, ブナーチシマザサ群落を基調とする植物群落とともに, 特色ある崩壊地・雪崩植生も広く分布し, また多くの固有種をも内包する植生であることが明らかとなった. 村落調査では, 西目屋村において, 明治期の後半部から現在に至る生業・生活構造の変遷を詳細に明らかにすることができた. 西目屋村は有名なマタギ村として知られており, 木材の伐採, 炭焼き, 山菜・きのこ採集, 狩猟など深く山とかかわった生業とともに, 水田稲作にも強く依存し, また近年にはリンゴ栽培も拡大してきた. 藩政期以来の伝統をもつ鉱山(尾太)開発の消長にも強い影響を受け, 近年ではダム建設の影響も重要である. ブナ林帯におけるマタギ村としての特性とともに, 鉱山やダム開発, あるいは藩政期の留山制度, 明治期以降の国有林の卓越性, 高度経済成長期以降の薪炭生産の衰微にともなう公営の林業や土木業の侵透など, 大きく外部の経済・社会・政治的な諸条件に応じて揺れ動く生態史展開にも留意する必要性が明らかになった. また, 白神山地域の基層文化の生態史は, 東北の他のブナ帯にあるマタギ村での生態史と比較することにより, よりその特性が明確となる見通しを得た. 2年後の報告書出版に向けて, 問題点の把握と基礎資料の収集が軌道にのったと総括することができる.
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