Research Abstract |
言語行動をふくむ種々のレベルの交信行動と, 知覚・認知機能とを支えている基礎的過程としての記号系活動の成立機序を明らかにし, それを通して交信行動と知覚・認知機能との相互作用を解析しようとして, 交信行動や知覚・認知機能に種々の障害をもつ事例について, その障害の様相を把握するとともに, その療育的働きかけによる行動の改善の過程の分析が試みられた. 本研究ではそのため, (1)発達遅滞児, (2)開眼受術者ないし弱視者, (3)自閉症児, (4)脳損傷者, (5)重症心身障害児, などの各種の障害事例について, (1)言語的遅れとともに視覚的認知機能, とくに視覚的探索活動が未分化な障害児に対して基本的な注視および追視運動の解析を行ない, 健常児の記録と比較する, (2)開眼受術者と弱視者に対して, 事物の識別の成立の過程の分析を行なうとともに, 人の顔の識別と表情の判断の成立過程を追跡吟味する, (3)自閉症者に対して母親との二方向的交信行動の成立のための前提条件を分析する, (4)失認, とくに半側空間無視などの脳損傷者に対して, その行動特性の分析をもとに空間認知成立の条件を明らかにし, かつ損傷部位との関連を検討する, (5)重症心身障害児に対しては, とくに能動的な姿勢の変換をもたらす外部よりの働きかけを吟味し, その信号的特性を解明する, などの研究が各班で行なわれた. さらにそれに付随して, 知覚・認知機能の基礎過程としての視覚的探索活動の解析を, 健常成人を破験者として, アイカメラ, EOG, さらにコンピューターによるtopographic mappingなどを用いて行ない, その結果, 眼球運動に伴なう注意のメカニズム, その個体差, さらに眼球運動と動機づけとの関連が明らかにされつつある. また, 脳波, 誘発電位, 事象関連電位などの左右大脳半球差の画像表示の方法を検討して, この方法が半球特殊化の個体差や脳の機能障害の分析の手段として有効であることが示唆された.
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