1987 Fiscal Year Annual Research Report
日本文学研究における琉球文学の定位と文学史研究再編の試み
Project/Area Number |
62301055
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池宮 正治 琉球大学, 法文学部, 教授 (00044842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古橋 信孝 武蔵大学, 人文学部, 教授 (40092613)
藤井 貞和 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40134754)
嘉手苅 千鶴子 沖縄国際大学, 文学部, 専任講師 (70185833)
関根 賢司 琉球大学, 法文学部, 助教授 (60088953)
岡本 恵徳 琉球大学, 法文学部, 教授 (70044831)
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Keywords | 日本文学 / 琉球文学 / 文学史研究 / 比較研究 / 琉球方言 |
Research Abstract |
本土方言と並ぶ琉球方言によって表現された琉球文学を日本文学にどう位置づけるか, さらには琉球文学を視野に入れた日本文学史をどのように構築するか, これが本研究の主題である. 琉球文学はこれまでも本土文学とりわけ古代前期の文学研究に活用されてきたが, 主として語彙研究と, 古代歌謡以前の空白の文学史を模索し辿るための補助的材料として取り扱われてきた. 琉球文学が文学研究に裨益した過去の例であって, 今日もその意義は失われてはいないが, 本土文学を主軸に捉えた補助的な存在としてではなく, 琉球文学を含む統合の文学(史)としてどうこれからの文学史を考えればよいかについて, 我々は東京研究集会および沖縄現地研究集会を開き, さまざまな視点から討議した. その結果, 本土と沖縄(琉球)は, 一時期まで, およそ十世紀ほどの社会進展の時間差があったこと, そのため従来の絶対時間の文学史の観点からは彼我の社会の差, 文学の内実の相違を考慮に入れなければならず, また, 社会や文学の内実を基軸にして文学史を考えるならば, 文学史における時間は相対化されざるをえないことになる. いずれにせよ, 本土文学と琉球文学を両睨みにした〈複眼〉の文学史観が必要となってくる. さらには, 奄美・宮古・八重山の諸島を視野に入れるならば, 発展段階の相違と著しい方言差によって, 複眼の文学史観はいっそう重層化されなければならなくなるであろう. 今後, 日本文学(研究)の外枠が広がるにつれて, アイヌ文学や渡来人・在日朝鮮人などの文学表現の領域に向けて, 新たな文学史再構築の作業が進められていく可能性も見出されつつある. 我々は各人の専攻の枠組をこえて交流し, 討議し, 研究を交換することによって, ようやく方向性を見出すに至った. 次年度の沖縄・東京研究集会において, さらに個別的なテーマを掘り下げ, 全体的な課題に関する成果をまとめたいと考えている.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 池宮正治: 國学院雑誌. 88-12. 64-77 (1987)
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[Publications] 池宮正治: 琉球大学法文学部紀要国文学論集. 33. 1-29 (1988)
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[Publications] 池宮正治: 琉球大学法文学部紀要国文学論集. 33. 93-160 (1988)
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[Publications] 岡本恵徳: 書斎の窓. 369-11. 13-20 (1987)
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[Publications] 嘉手苅千鶴子: 法政大学沖縄文化研究所紀要. 14. 1-35 (1988)
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[Publications] 古橋信孝: 民族芸能研究. 6. 43-48 (1967)