1989 Fiscal Year Annual Research Report
動物における種内個体間の協力と攻撃の進化に関する研究
Project/Area Number |
62304002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉昭 名古屋大学, 農学部, 教授 (50115531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 芳 名古屋大学, 農学部, 助手 (00177750)
椿 宜高 名古屋大学, 農学部, 助手 (30108641)
岩橋 統 琉球大学, 農学部, 助教授 (90128471)
山村 則男 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (70124815)
松田 博嗣 九州大学, 理学部, 教授 (10027336)
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Keywords | 動物社会 / 協同繁殖 / 集団求愛場 / 子殺し / 精子競争 / 大発生 / エゾヤチネズミ / ハダニ |
Research Abstract |
平成元年度は3年計画の総合研究(A)の最終年度であるため、3年間の研究のとりまとめと、とくにデ-タをさまざまな分野の専門家でチェックし討議して、理論的説明を見出すことに重点をおいた。このため5月には研究代表者伊藤が佐賀におもむき、研究分担者山村および研究協力者辻とともに、動物の生活史戦略の進化における個体間競合の役割についてモデル建設のため討議を行った。また6月には名古屋において動物社会研究において近年重要問題となった血縁関係制定のためのDNAフィンガ-プリント法の研究会を行った。さらに7月にはネズミを研究していた研究分担者河田が九州大学を訪れ、研究分担者松田を含む数理グル-プと討議を行った。これらの中から生活史進化の数理モデル、動物社会進化のレプリコンモデルなどができあがった。 さらに8月には日本生態学会の機会に、伊藤、山村が北海道大学を訪問し、研究分担者斎藤裕らと合宿討論会を行った。そのおもな成果は(1)動物が高密度にさいし示す繁殖抑制が決して全体のための個の犠牲ではなく、繁殖を抑制した個体も、それにより寿命を延長させて生涯繁殖成功度を繁殖個体と同様に保つことが明らかになったこと、(2)繁殖抑制か移動かという問題がネズミのみならず昆虫から植物まで共通の問題であるとして、そのモデル化の方向が決まったこと、(3)ハダニ等ダニ類の特殊な社会進化のすじみちがわかったことである。これらをもとに、参加者は論文の執筆に入り、いくつかの論文が完成しようとしている。 平成2年1月22日〜23日には最終報告会を開き、集団求愛行動、兄弟殺しなどの、昆虫から霊長類まで共通にみられる現象の進化的意義を討議した。そして、研究成果の一部を単行書として発表することとした。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Yamamura,N.and Tsuji,N.: "Postcopulatory guarding strategy in a finite mating period." Theoretical Population Biology. 35. 36-50 (1989)
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[Publications] Kawata,M.: "Growth and dispersal timing in male red-backed voles Clethrionomys rufocanus bedfordiae." Oikos. 54. 220-226 (1989)
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[Publications] Kawata,M.: "Fluctuating populations and kin interaction in mammals." Trends in Ecology and Evolution. 5. 17-20 (1990)
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[Publications] Nakamura,M.: "Cloacal protuberance and copulatory behavior of the alpine accentor(Prunella collaris)" Auk. 107. (1990)
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[Publications] Tsuji,K.: "Kin recognition in Pristomyrmex pungens(Hymenoptera:Formicidae):Assymmetrical change in acceptance and rejection due to odor transfer" Animal Behaviour. 39. (1990)
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[Publications] Yamamura,N.,Hasegawa,T.and Ito,Y.: "Why do not mothers resist infanticide? A cost-benefit genetic model" Evolution(in press). 44. (1990)
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[Publications] 伊藤嘉昭,長谷川寿一,長谷川真理子,斎藤裕,藤岡正博,辻和幸: "動物の社会関係:協同と攻撃" 東海大学出版会, 250 (1990)
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[Publications] 岩橋統,山根爽一: "チビアシナガバチの社会" 東海大学出版会, 307 (1989)