1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62304038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 雄司 東京大学, 医学部, 教授 (60112447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 玄 帝京大学, 医学部, 教授 (70114410)
鈴木 和子 大田区蒲田保健所, 予防課長
富山 富士子 琉球大学, 医学部, 講師 (20117584)
砂川 恵徹 沖縄県南部保健所, 所長
石津 宏 琉球大学, 医学部, 教授 (30034086)
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Keywords | 地域精神衛生 / 沖縄 / 事例検討 / 精神分裂病の疫学 / 地域特性 / 暴力などの問題行動 / 問題行動への対応パターン |
Research Abstract |
本年度は以下の3点について研究を行った。1)沖縄県粟国島(人口千人)における昭和53年以降の巡回相談活動から、地域精神衛生活動と疫学との関係を検討した(援助対象延60名、年間3-7名、分裂病圏18名、アルコール関連障害14名)。事例化の過程は(1)未治療・治療中断例を含む陽性症状のある分裂病、(2)大発作を伴うてんかん、(3)陽性症状の目立たない分裂病群、(4)精神発達遅滞群、(5)アルコール問題の順であった。予後では、(1)長期在院により対象外となっている群と島内で適応良好に分かれる。(2)島外での生活歴が長いものと援助後入院によらない流出例がある、(3)事例発見と事例援助継続が人口移動の中でみられる。本研究は、人口規模が小さいため悉皆調査としても評価でき、疫学的検討と実践との関連づける方法は、対象のみを客観的に捉える一斉調査法の欠点を補いうる点に特徴がある。2)沖縄県・埼玉県・東京都内の保健婦の把握する精神障害事例を通して、「地域間の差異」を地域の中で暴力・迷惑な問題を一指標として検討した。全体的な傾向としては、(1)1/3は分裂病圏のものが占め、(2)住宅地域では、アルコール関連障害や老人性精神障害のものが多い、(3)秩父・沖縄では行政機関(福祉・警察など)が関与しているが、都市部では同居・別居家族が関与する。検討事例の内容分析からは、(1)問題の波及のパターンは、暴力など直接周囲に危害を与えるものと引き篭り、不潔などの気味悪さを与えるものに分かれ、(2)家族の対応は、家族から問題の表面化がおそいもの、家族の対応が限界に来ているもの、家族が事例を拒否しているものの3つの類型化できる。これに対して近隣は、陰性症状を持つものにはソフトに、陽性症状をもつものには事例への反発・攻撃感情が表面化し、近隣が組織化されることが都市部で顕著であることがみられた。これらを踏えて、次年度は、対象事例の予後の検討を含めて、研究の総括を行う。
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