1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62440012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 仁 東京大学, 農学部, 教授 (10011868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 昌男 東京大学, 農学部, 助手 (70107407)
小林 正彦 東京大学, 農学部, 助教授 (60162020)
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Keywords | 絹糸虫類 / 家蚕 / モザイク遺伝子 |
Research Abstract |
絹糸虫類に限らず、種の進化及び分化は生殖過程を経て達成されるものであり、受精機構はその過程のポイントとなるものである。本研究においては、家蚕生殖細胞の成熟分裂ならびに受精機構を明らかにする目的で、遺伝的に各種のモザイクや倍数体を引き起すmo遺伝子を用いて解析を進めている。本年度においては、受精の際にmo遺伝子によって生ずる異常受精について明らかにした。すなわち、家蚕の卵色突然変異であるpere系統を用いて、2倍体モザイク、高倍数体モザイクおよび高倍数体卵の産出割合を解析した。pe+/+re、mo/moの遺伝子組成をもつ雌蛾とpere/pereの雄蛾を交配して得た総数48890の卵のうち、異常な受精を呈した卵が9409存在し、内訳は2倍体モザイクを示す赤色白色卵が4492、黒色の高倍数体卵が4038、高倍数体のモザイク卵が899(黒色白色卵566、黒色赤色卵256、黒色白色赤色卵77)であった。すなわち、2倍体モザイク卵の産生数は高倍数体卵の産生数とほぼ等しい値であり、1蛾の産下卵中における両者の割合には高い相関関係がみられた。このことから、2倍体モザイクは重複受精によって形成され、2個の遺伝子組成の異なる卵核が1個の精子によって順次受精するものと考えられた。一方、高倍数体卵は、不分離の2倍体卵核が1個の精子と接合することによって形成されると推察された。さらに、モザイク及び高倍数体卵の出現頻度を調節する、両者に共通する因子の存在が示唆された。すなわち、高倍数体モザイク卵出現の観察値は1.84%であり、2倍体モザイク卵の割合と高倍数体卵の割合から求められる期待値と一致した。従って、異常受精が行われる過程において、モザイク卵の形成は高倍数体卵の形成とは独立して行われると考えられた。これらの知見は従来提出されていた異常分裂に関するモデルを修正する必要があることを明らかにしたものであり、新しい数種のモデルを提出した。
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[Publications] Ebinuma,Hiroyasu: Genet.Res.Camb.51. 223-229 (1988)
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[Publications] Watanabe,Hitoshi: J.Inverteb.Phathol.52. 401-408 (1988)
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[Publications] Maekawa,Hideki: Chronosomoi. 96. 263-269 (1988)