1989 Fiscal Year Annual Research Report
mtDNAの変異性を標式としたサケ科魚類の遺伝資源学的研究
Project/Area Number |
62440016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼知 健一 東京大学, 海洋研究所・資源解析部門, 教授 (30013569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 敬典 東京大学海洋研究所, 資源解析部門, 助手 (70205467)
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Keywords | mtDNA / 切断型 / サケ科魚類 / 遺伝資源 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
従来、mtDNAの分離抽出は、生鮮な組織を用いなければ収量を上げることができなかった。この研究では、凍結組織からのmtDNA抽出にTEK(TrisーEDTAーKcl)緩衝液を用いて、ホモジェナイズし、20%のしょ糖液を下部に重層して遠心することでミトコンドリアの収量を上げた。凍結標本は保存条件によってミトコンドリアの分離に好適な肝臓を用いることができない場合があり、ミトコンドリアが最も安定した状態で保存される組織の検討をした。その結果、卵巣を用いることで凍結組織からも安定してミトコンドリアが分離できるようになった。このことは、サケ科魚類以外にも応用が可能であることが、スケトウダラ、マダイ、アユなどでも確認でき、先に報告したmtDNA分離法、生鮮組織の輸送法とあわせて、どのような状態の組織からも効率よくmtDNAを分離できるようになった。 先に報告した日本産サクラマスとサクラマスの分布南限にある台湾産サクラマス(サラマオマス)との塩基置換数と分化年代の推定を行った。10種類の6塩基対認識の制限酵素で切断した結果、台湾産のサクラマスの切断部位は49で切断型はスべて日本産サクラマスに見られたものであった。台湾産のサクラマスは各酵素の切断型が全て同一でただ一つのゲノム型しか持たないと考えられた。このような単型は日本産サクラマスには見られず、集団の大きさによる瓶首効果によると考えられた。台湾産と日本産サクラマスの遺伝的な違いを塩基置換数で求めると0.213%〜1.833%で台湾産サクラマスは極めて日本産サクラマスに近縁であると考えられた。塩基置換数から日本産サクラマスの各型との分化年代を推定した結果、約14万年〜126万年という値を得た。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] K.Numachi,T.Kobayashi,K.Chang,and Y.Lie: "Genetic identification of differentiation of Formosan land locked salmon,Oncorhynchus masow for mosanus by restriction analysis of mitochondrial DNA"
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[Publications] S.Wada,T.Kobayashi,and K.Numachi: "Genetic variability and differentiation of mitochondrial DNA in Minlce Whales" IWC.Genetic workshop,Document SC/89/GEN20. 1299 (1989)
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[Publications] K.Numachi,T.Kobayashi,S.Wada,and E.Shimura: "Mitochondrial DNA Variation and its use for cetacean population study" IWC Genetic workshop,Document SC/41/SHMi19. 1499 (1989)