1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62450044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑山 浩然 東京大学, 史料編纂所, 教授 (90013268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 恵子 東京大学, 史料編纂所, 助手 (00195637)
山家 浩樹 東京大学, 史料編纂所, 助手 (60191467)
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Keywords | 武家故実 / 古文書 / 引付 / 室町幕府 / 伊勢氏 / 蜷川氏 / 大館氏 / 群書類從 |
Research Abstract |
1.研究の概要 : 歴史資料の根幹をなす「文書」の中で発給者側に控えとして残されたものを「引付」と称する. 室町幕府関係の引付については, 既に研究が進み刊行もされている御前沙汰・政所沙汰関係のものを除けば, 所在調査, 文献学的調査のいずれについても甚だ遅れている. この研究課題では, 引付の(1)検出, (2)蒐集, (3)史料学的研究, (4)個別文書の編年的研究を行なおうとするものであり, 本年度は(1)と(2)に重点を置いて作業を進めた. 2.史料の調査 : 本年度史料調査を実施した機関は, 宮内庁書陵部・国立公文書館内閣文庫・前田育徳会尊経閣文庫・名古屋大学付属図書館・名古屋市立博物館・同蓬左文庫・西尾市立図書館岩瀬文庫・京都大学付属図書館・同博物館・広島市立中央図書館浅野文庫・山口県立図書館・山口県文書館・下関市立長府博物館・萩市郷土博物館・九州大学付属図書館・同九州文化史研究施設・熊本大学付属図書館・鹿児島大学付属図書館などである. 3.史料の蒐集・整理 : 各機関において必要史料の複製領布を依頼すると共に, 未翻刻史料を順次翻字している. 引付は武家故実書の中に伝存されることが多いのに鑑み, 引付のみにこだわることなく, 武家故家書全般に目を配るよう留意しながら研究を進めている. 4.本年度得られた知見 : 室町幕府関係者の中で引付を残す可能性のあるのは政所執事を勤めた伊勢氏, 政所代の蜷川氏, 内談衆であった大館氏, それに奉行人くらいに限られる. 他家の史料を書写する動きは天文・永禄ころから盛んとなり, 次第に故実伝授の対象とされるようになる. 江戸時代に入るとこの傾向は一層顕著となった. 中でも伊勢氏は熱心であったようで, 現在写本として残されている史料の多くは伊勢氏系統の史料である. 『群書類從』に採用されたものの多くはこのような流布本であって, その他の史料はほとんど流布していない.
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