1987 Fiscal Year Annual Research Report
電気浸透法による土壌の水溶性成分の移行特性とその応用的研究
Project/Area Number |
62470115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 聰 東京大学, 農学部, 助教授 (20032295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
犬伏 和之 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (00168428)
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Keywords | 電極反応 / 特殊電極の開発 / 電気伝導度 / 塩性土壌 / 根圏微生物 / イオン移行特性 / 水溶性成分 |
Research Abstract |
土壌を湿潤し, 塩類を添加した後, 土壌に直流電流(25V・100mA)を通ずるときわめて短期間のうちに,負極での電気伝導度(EC)が減小する一方, 陽極でのECが増大した. この現象と同時に,電極反応による銅板の腐食が著しいことも観察された. 本研究の将来の応用的展開を行っていく上でかかる電極の腐食問題は大きな障害となることが予想されたので, 本年度はまず, 安定で比較的安価な取扱い易い電極の開発を行った. 種々の検討の結果, 細い銅線でネット状としたものを炭素の微粒子を包蔵するゴムシートでコーティングすることにより, 本研究に最適の電極を作製することができた. 本電極を用いて,火山灰起源未耕地土壌に対して,標準塩類組成(US.Salinity Laboratory提示)の塩類を種々の濃度に調整して加え,土壌水分の変化による水溶性塩類の移行特性を追跡した. 通電条件を上記の条件に合わせて行うと高水分・低濃度塩類区でもっとも大きなイオンの移行特性がみられ,低水分・低濃度塩類区で最小であった. 土壌水分の塩類濃度の組み合せから,土壌水分が土壌中の種々の物質の電気移行性にもっとも大きな影響を及ぼす要因の一つと考えた. イオン移行の特性は電極に銅板を用いた場合と類似の傾向を示したが,負極でのEC値の低下または正極でのEC値の増大の時間的変化は新しく開発した電極で若干の遅延があることを見出した. これは電極の導電特性によるものも考えられた. イオン移行の特性でもっとも興味ある事実は通電によって生じた土壌中での物質の偏在性が通電を停止した後もほとんど変化することなくそのままの偏在性で維持されるという事実である. このことは塩性土壌の改良の基本を本研究の応用によって行なおうとするとき, きわめて有利な要素であると示唆された. 次年度以降は水溶性成分の移行特性が植物の生育にどのような影響を及ぼすかについて, 根圏微生物との生態との関係から検討していく予定である.
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