1989 Fiscal Year Annual Research Report
発生における調整現象としての色素上皮細胞の分化形質転換の分子機構
Project/Area Number |
62480020
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
江口 吾朗 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (80022581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿形 清和 岡崎国立共同研究構機, 基礎生物学研究所, 助手 (70167831)
児玉 隆治 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (90161950)
渡辺 憲二 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (00079691)
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Keywords | 修復再生 / 分化形質転換 / 脱分化 / 再分化 / 遺伝子発現調節 / 形態形成因子 |
Research Abstract |
1.80歳の高齢者から単離されたヒト色素上皮細胞にレンズ細胞への分化転換能が保持されていることを世界にさきがけて実証し、色素上皮細胞のレンズ細胞への分化転換性がヒトをも含む脊椎動物に普遍的であるとする研究代表者の仮説を実験的に裏付けた。また、ヒト色素上皮細胞に由来する多能的脱分化細胞の株化に成功し、ヒトの細胞によるすぐれて有用な分化転換実験系の基礎を確立した(江口・阿形)。 2.色素上皮細胞がレンズ細胞に分化転換する過程で経由する多能的脱分化状態では、色素上皮細胞及びレンズ細胞のそれぞれが特異的に発現する遺伝子群は完全に不活性化されておリ、多能的脱分化細胞は細胞種特異的遺伝子の発現からみて、完全に中立の状態にあることがニワトリ胚色素上皮細胞について明らかにされた。また、多能的脱分化細胞の再分化は転写レベルで制御されることが実証された(阿形・児玉・江口)。 3.色素上皮細胞のレンズ細胞への分化転換の制御に関与すると推定される2種の遺伝子のクロ-ン化に成功し、それらの全構造を明らかにすると共に、その機能を解明するための基礎的知見を確立した(阿形)。 4.色素上皮細胞のレンズ細胞への分化転換を制御する細胞外環境因子のひとつとして、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)をはじめて同定した(渡辺・児玉・江口)。 5.色素上皮細胞のレンズ細胞への分化転換過程では、ギャップ結合分子種の転換がおこることが明らかにされた(児玉・江口)。 6.色素上皮細胞の分化形質発現の安定化を司どる細胞表面分子は、分化量120KD前後の糖蛋白質であることが明らかとなり、その単離精製の基礎が確立された。 これらの新知見は、組織細胞の分化転換の分子機構を基礎づける重要な成果として位置づけることができる。
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[Publications] Kitamura,Y.: "Ontogenesis of α_2ーadenoceptor coupling with GTPーbinding proteins in the rat telencephalon." Journal of Neurochemistry. 53. 249-253 (1989)
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[Publications] Orita,H.: "Aortic endothelial cells synthesize a large chondroitin sulphate proteoglycan capable of binding to hyaluronate." Biochemical Journal. 256. 61-68 (1989)
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[Publications] Kodama,R.: "Partial amino acid sequence of the major intrinsic protein(MIP)of the chicken lens deduced from the nucleotide spquence." Experimental Eye Research. (1990)