Research Abstract |
本研究は,野生果樹自生地の分布と環境特性をマクロに把握するとともに,暖温帯,冷温帯,亜寒帯に自生する野生果樹をとりあげ,その生育地の現状を植生学的に調査し,野生果樹の生育と植物群落の構造・動態との関係について分析することを目的としている. また, そうした調査・分析の結果をふまえて,野生果樹遺伝資源を保全しつつ森林を利用することが可能となるような植生管理方策について検討することも大きな課題である. そこで,本年度は,以下のような点について,研究を実施した. 1.緑の国勢調査から,野生果樹自生地のリストアップを行い,植生タイプごとの階層ダイヤグラムを作成し,そこにおける果樹の地位を評価した. 2.暖温帯の野生果樹自生地の例として,伊豆半島・浮山地区のヤマモモ自生地(スダジイ林),戸田地区のタチバナ自生地(クヌギ林)をとりあげ,植生調査,果樹変異調査を行った. 以上の研究結果から,以下のような点が明らかになった. 1.ヤマモモ・タチバナ樹の残存状況と更新過程は,それらを含む群落構造の差(主に人為的影響の差異を反映していると考えられる)とよく対応していることが分かった. 2.群落内の野生果樹の果実変異は,群落分布・構造と関係していることが明らかとなった. したがって,野生果樹遺伝資源保存のためには,群落構造そのものの保全が重要であるといえる. 次年度は,冷温帯の例として,山形・上山地区のアケビ自生地,亜寒帯の例として,長野県・軽井沢地区のブルーベリー自生地,富士山のコケモモ自生地をとりあげ,今年度と同様の手法で,研究を実施するとともに,全体をとりまとめて,野生果樹自生地を保全するための植生管理方策を提案する予定である.
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