1988 Fiscal Year Annual Research Report
野生果樹自生地の分布・構造と保全に関する応用植生学的研究
Project/Area Number |
62480038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井出 久登 東京大学, 農学部, 教授 (70011905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶浦 一郎 農林水産省, 農業生物資源研究所, 企画科長
武内 和彦 東京大学, 農学部, 助教授 (90112474)
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Keywords | 野生果樹 / 遺伝資源 / 現地保存 / 植生管理 |
Research Abstract |
野生果樹自生地では、果実形質等に幅広い変異が認められ、将来の多用な品種化の可能性を保障していることがわかった。したがって、野生果樹の場合、選抜の過程を経ていない自生地の固体群を集団的に保存していくことが、遺伝的多用性を維持していくうえできわめて有効といえる。 しかし、野生果樹は一般に陽樹的性格をもつため、保全に際しては、こうした生理的特性を十分考慮する必要がある。火山地や岩角地のように、自生地の群落が自然条件に規定されて、放置しても遷移がすすまない場合には、自生地を保護することが有効な手段である。しかし、放置すれば遷移がすすむような場合には、むしろ陽樹株を持続させる積極的な植生管理が必要である。 ヤマモモ、タチバナは、薪炭林利用のような人為的なインパクトがあってはじめて維持されてきたものである。適正な管理が放棄されたいま、植生は自然植生へと遷移し、その結果、野生果樹が、消滅したり、更新できないといった問題が引き起こされている。燃料革命により、野生果樹の宝庫ともいえる陽樹林の存立基盤が薄らいでいる今日、あらたな視点での自生地保全が必要とされる。 伊豆・浮山地区におけるヤマモモ保存樹の保存事例は遺伝資源の保存と自生の 緑地的利用が共存しうる可能性を示している。すなわち、ここでは、別荘開発の際にヤマモモを伐採せず、逆に取り込んだ形で開発を行った。その結果、遺伝資源が庭木として保存されることになった。また、高知県室戸市では貸別荘地のなかに保存されたタチバナが周辺の適度な伐開によってかえって樹勢が増している例をみることができた。今後も自生地を保全していくためには、こうした果樹遺伝資源保存と自生地の緑地的利用の共存も検討していく必要がある。
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[Publications] 井出久登: 昭和63年度日本造園学会関東支部大会要旨集. NO.6. 14-15 (1988)
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[Publications] 大黒俊哉: 造園雑誌. 52. (1989)
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[Publications] 武内和彦: 造園雑誌. 52. (1989)
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[Publications] M.Hirai: J.Japan.Soc.Hort.Sci.1989.
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[Publications] 梶浦一郎: "遺伝資源のはなし" 技報堂出版, (1989)