1988 Fiscal Year Annual Research Report
脳移植法を用いた老年痴呆病巣の発症機構に関する基礎的研究
Project/Area Number |
62480247
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
飯塚 礼二 順天堂大学, 精神科, 教授 (00052952)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永矢 洋 順天堂大学, 精神科, 助手 (60189165)
河村 哲 順天堂大学, 精神科, 助手 (20204779)
一宮 洋介 順天堂大学, 精神科, 助手 (10184631)
前原 勝矢 順天堂大学, 精神科, 講師 (40124979)
|
Keywords | 加令 / マイネルト神経核 / アルツハイマー型老年痴呆 / コリンアセチルトランスフェラーゼ / 細胞の大きさ / 神経成長因子(NGF) / 脳移植 |
Research Abstract |
最近、マルツハイマー型老年痴呆(ATD)において、コリン作動性ニューロンを多く含んでいるマイネルト精神核の脱落、変性がその病態に大きく関与していることが明らかになってきている。今年度我々は、ヒトや霊長類のマイネルト核と相同なラットの腹側淡蒼球の大型コリン作動性ニューロン群の老化に伴う変化をコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の抗体を用い免疫組織科学的に検索した。実験動物として、2ケ月令および25ケ月令のウィスター系雄ラットを用いた。腹側淡蒼球の領域で、免疫組織科学的にChAT陽性の大型の卵形の細胞と大型の錐体形の細胞の集合をマイネルト核の領域と同定し、細胞体の大きさ、樹状突起の数、分岐数、伸展度を計測した。その結果、老令ラットではChAT陽性細胞の輪郭が不明瞭で、染色系が淡いものと濃染しているものとがあり細胞集団が均質でない傾向が認められた。また老令ラットで有意にChAT陽性神経細胞体の一平面上における面積の減少がみとめられた。さらにChAT陽性神経細胞の樹状突起の数、分岐の数、伸展度も加令に伴い有意に減少していることが証明された。これらの所見は、腹側淡蒼球のChAT陽性神経細胞の「樹状突起の場」が老化に伴って減少することを意味し、これらの細胞群の情報処理能力が低下している可能性を示すものと考えられる。学習、記憶に重要な関わりを持つと考えられているこの部位に、老化に伴うこのような変化が認められたことは、加令による学習、記憶能力の減退との関連の可能性を示すものと思われる。これらの結果はATDの病態を考える上での重要な基礎データになると思われ、またこのデータを基に、今後の老令ラットへの移植実験および老令ラットへのNGFの影響を検討していきたい。
|