肺移植後の拒絶反応に関する組織学的・免疫学的研究

1989 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62480300
• Research Institution: Fukuoka University
• Principal Investigator: 白曰 高歩 福岡大学, 医学部・外科学第二, 助教授 (20038863)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 元永 隆三 福岡大学, 医学部・外科学第二, 助手 (80166339)
• Keywords: 犬同種肺移植 / 拒絶反応 / 血管周囲単核球浸潤 / 気管支吻合部生着 / 大綱被覆

Research Abstract

本年度の本研究では、昨年度に引き続き、犬・ラットの2種を研究対象として実験を行った。移植肺においては移植後、1週目頃より、細・小血管周囲・やや遅れて小気管支周囲に拒絶反応の主体的役割を担う単核球の浸潤がみられる。これら単核球の浸潤機序、ならびに役割について光顕的・電顕的・免疫組織学的解析を行なった結果、
(1)当初focalな形で単核球浸潤がみられ、続いて血管内皮細胞の障害が生ずる。この内皮細胞障害には移植後早期において過酸化脂質(白血球)の関与も考えられる。
(2)拒絶反応においては、血管基底膜障害より、肺脂系への破壊が進み水腫性変化を移行する。
(3)浸潤単核球はcytotoxicCTリンパ球とmacrophageで構成されている。以上の結論等を得た。ラット肺移植では研究者辞退の為、予定した成功率が得られず、実験中途より犬移植肺研究を主体とするものにきりかえた。特に実験後半では、気管支吻部の拒絶反応に関して組織学的研究を詳しく行ったが、結論として、
(1)実質肺組織にみられるfocalな単核球集蔟とは異なり、リンパ球浸潤はびまん性・散在性である。
(2)実質肺組織に比して、拒絶反応に発現は一般に極めて弱い。
(3)気管支吻合部生着の為には、十分な血行の確保が重要であり、大綱皮覆が有効である。
以上の結論を得た。これらの研究成果については各種学会、或は、論文において発表した。

Research Products

• [Publications] 白日高歩,他: "肺移植ーその現況と問題点ー" 福岡大学医学紀要. 12. 231-238 (1985)
• [Publications] 白日高歩,他: "肺移植ー最近の状況ー" 日本胸部臨床. 44. 893-901 (1985)
• [Publications] 白日高歩,他: "イヌ移植肺の循環動態と超微形態像に関する検討" 移植. 20. 673-683 (1985)
• [Publications] 白日高歩,他: "移植肺保存に関する組織学的検討ならびに考察" 日本胸部疾患学会雑誌. 24. 7-15 (1985)
• [Publications] 白日高歩,他: "同種肺移植後早期の肺動脈圧変動" 日本胸部疾患学会雑誌. 24. 835-843 (1986)
• [Publications] 白日高歩,他: "肺移植時の気管支吻合部omentopexyの効果について" 日本胸部外科学会雑誌. 34. 467-473 (1986)
• [Publications] 白日高歩,他: "実験的肺移植(CyclosporinーA使用)にみられる拒絶反応ーその組織学的検討ー" 日本外科学会雑誌. 87. 572-580 (1986)
• [Publications] 白日高歩: "肺移植ー拒絶反応ー" 胸部外科. 40. 51-56 (1987)
• [Publications] T,Shirakusa: "Ultrastructural study on acute rejection of canine allograft using Cyclosporin A" Thoracic and Cardiovascular Surgeon. 35. 361-365 (1987)
• [Publications] T,Shirakusa,et al: "Histologic and hemodynamic investigation of canine lung allografts" The Japanese Journal of Surgery. 18. 291-299 (1988)
• [Publications] T,Shirakusa,et al: "Lung allografts with and without omentopexy in canines" The Japanese Journal of Surgery. 19. 246-250 (1989)
• [Publications] 白日高歩,他: "雑種成犬を対象として両肺同時移植実験" 胸部外科. 42. 822-825 (1989)
• [Publications] 白日高歩,他: "Glutaraldehyde処理代用気管の移植実験ー内視鏡的観察ー" 気管支学. 12. 65-72 (1990)
• [Publications] 白日高歩,他: "雑種成犬を対象とした気管移植実験" 日本外科学会雑誌. (1990)
• [Publications] 白日高歩: "BedーSide Memo(分担執筆)肺・心肺移植" 世界保健通信社, 6 (1988)