Research Abstract |
ニワトリ(鳥類)始原生殖細胞(PGC)は, 胚発生の早期に卵黄嚢内胚葉から分離し, それから一時, 血行移動を経たのち組織に出て, 目的地の生殖巣原基(GR)に移住していき, そこで生殖細胞に分化する. PGCがこのように, 能動的に, 迷わず, 標的としての生殖巣に到達できるのはどのような機構によっているのか. このニワトリPGCについてその解明を行う. 1.PGCは, 細胞表面に移動能に関わる特性を具えている;その検証:(1)細胞表面糖タンパク糖鎖を知るため, それと特異的に結合する各種レクチンの結合パターンを, 組織・細胞化学的に調べた. その結果, PGCに陽性反応を示したレクチンは, ConA, RCA, WGAであって, 反応は細胞表面と細胞小器官に特異的に現われ, それは, PGCの分離期, 血行移動期, 生殖巣への定住初期, に亘って認められた. リセプター分布域の狭いレクチンについても調べており, 糖鎖構造パターンの変動と, PGCの移動・分化との関連をさらに追究していく. (2)モノクローナル抗体の作出:PGC定住期前の尿生殖巣領域(この中にPGCが多数存在)を集めて抗原とし, マウスで免疫し, 細胞融合法で雑種細胞をまず作った. この中からPGC特異抗体を作る系統を, いま選別中である. 2.GRからの誘引因子によるPGCの定方向移動:血行移動中のPGC(2日胚)を単離し, GRを近傍においてin vitroで培養してPGCの動態を観察した. PGCは培養基質として用いてコラーゲン層の上, あるいは中を, まず突起を出し, それに先導されつつGRに向って移動した. これは走化機構を強く示唆するが, 誘引因子の特定はまだできていない. 3.移住経路において細胞外基質がPGCの移動に有意に働く:その検証:上記の培養系で, フィブロネクチン(FN), I型コラーゲン, ラミニンをコートした基質上でPGCの動態を調べた. PGCの接着性, 伸展性とも, FNは有意な効果を示した. 培養液中にFNの濃度勾配をつくると, PGCはその勾配に従って移動した.
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