1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510011
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土田 健次郎 早稲田大学, 文学部, 助教授 (00120923)
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Keywords | 王安石 / 三経新義 / 字説 / 道統 |
Research Abstract |
本年度は、慶暦年間に端を発した思想運動がいかに展開していったかを、王安石の学問とその対立者たちの思想を中心に検討した。まず、王安石の主著である『周官新義』の内容を調べ、彼の経学の基本姿勢が慶暦の新義の延長線上にあり、その点では彼の批判者たちと同じ立場にあることを確認した。 王安石の経学方面での著作についての専論は、中国の学者による輯佚作業以外、今まで驚くほど少なかったが、その理由の一つに資料上の問題がある。『周官新義』も完本は現存せず、輯佚作業を通してしかその内容を伺いえないが、その事情は同じく主著である『字説』も同じである。本年度は従来より手薄であったこの『字説』の輯佚作業も試みたが、これについては更に継続していくつもりである。ただこの『字説』をなりたたせているのが文字の体系への信頼であり、その体系のつかみ方に王安石の秩序観と経学の方法論があざやかに浮き出ていることが具体的に知られた。今後はこれをもとに、王安石の経学の本質と思想史上の位置を更に追求していくことになろう。なお、当時の王安石経学批判の資料も収集したが、この作業も更に継続していくことになろう。 道学は、王学(王安石の学問)と自らを対比することによって個性を輝かせたが、その個性の内容を具体的に明らかにできた。両者は共通の問題意識をもち、そのうえで互いに各々の特徴を顕示したといえる。個々の議論の底に潜む共通の問題意識を掘りおこし、そのうえでそれぞれの自己主張の合意を明らかにする研究方法は、道学の形成を北宋思想史の脈絡の中に位置づける作業に大いに有効であったと考える。
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Research Products
(2 results)