1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510061
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Research Institution | Miyazaki University |
Principal Investigator |
吉田 甫 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (80094085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗山 和広 宮崎女子短期大学, 助教授 (10170094)
宇田 廣文 宮崎大学, 教育学部, 助教授 (50040994)
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Keywords | 誤り方略 / 知識の領域固有性 / 分数概念 / 分数の大きさ |
Research Abstract |
本年度では、分数概念を学習し始める最初の学年である3年生を対象として以下の研究をおこなった。先ず、分数に対する彼らのinformalな知識を事前テストで検討した。この結果を分析して、担任にフィードバックし、それに基づいて分数単元全体についての指導案を作成した。この指導案にしたがって、各担任教師がおよそ3週間にわたる授業をおこなった。単元の指導の終了後に事後テストをおこなった。この事後テストで特徴的な方略を示した児童を、数十名選んで面接をおこなった。 こうした研究の結果、以下のような知見が見いだされた。 (1)事前テストでは、9割の児童が分数の端数としての意味を理解していた。ただし、この理解はあくまでもinformalな知識であって、formalな知識に基づくものではなかった。 (2)カリキュラムを構成する際の特徴としては、まず児童の理解が整数の概念に基づいていることを考慮して、分数が整数との対応できるということを理解させるための時間を設定した。さらに、こうした理解を深めるために、児童の構成的活動を積極的に活用した。 (3)事前テストでは、驚いたことに、およそ4割の児童が誤った方略を所持していた。その多くは、異分母同分子の問題で、分母が大きくなるほど分数の大きさも大きくなるという誤った知識であった。この方略を持つ児童に面接してみると、ほとんどの子どもは、1つの分数についての意味は理解していた。ところが、いくつかの分数を比較するという状況になると、先述の知識が応用されていたのである。このことは、彼らが分数独自の意味は理解していてもそれを現実の状況で適用する場面になると、彼らの既有知識である整数の概念を利用していることを示唆するものである。
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