1988 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ型金融システムにおける金融の証券化と国際化にかんする実証的研究
Project/Area Number |
62530061
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
居城 弘 静岡大学, 人文学部, 教授 (80022276)
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Keywords | ドイツの金融 / 兼営銀行 / ユニバーサルバンク / 金融の証券化 / 金融の国際化 / 金融システム |
Research Abstract |
本研究はいわゆるユニバーサルバンク制に特徴を有するドイツ型金融システムのもとでの金融の証券化と国際化についての実証的研究により、その特徴と問題点解明が目的である。前年度における古典的段階の証券化と国際化をめぐる検討を基礎とし、今年度は現段階(1970年代以降)を対象として考察した。現代金融における証券化と国際化の規定要因は、1.経済成長の鈍化、資金需要の減少、貸付資本の過剰蓄積の結果、新たな資金循環の形成を促したこと、2.各国財政危機ファイナンス目的の国債投資増大による証券化の進展とマネーフロー変化を端緒契機とする。更に3.銀行・金融機関が余裕資金の運用拡大を新規領域への貸出に求めた結果、リスク増大を回避する手段として、貸付債権の証券化とその流動化が迫られたこと、4.自由金利商品の創出も金融資産の累積を促した。5.現代の金融機関は、証券化の影響の下で、総じて、銀行・証券・投資業務を兼営するドイツ型銀行・金融システムへの接近・傾斜を強めたこと、6.国際化の進展については、ドル・国際通貨不安の深刻化とユーロ市場の拡大、新たな国際金融市場への各国金融市場の統合化が規定要因である。かくて現代の金融システムの問題点は、金融取引の肥大化と証券化が実物取引と再生産規模の拡大テンポを越え、自律的展開を示していること、これらは現代の通貨供給メカニズム・管理通貨制に支えられ、ドイツ型金融システムの広がりの中で、流動性リスク回避の可能性を増大させるものの、国際金融市場の統合化と資本移動の緊密化は逆に不安定化の契機をも内包・増幅する。国際的な金利、物価、為替安定の成否にとって、国際的政策協調の展開が重要性を高めざるをえないゆえんが明らかとなる。現代金融システムの研究にとって、サービス化の進展と金融の役割、金融機関の同質化の中での特殊・専門金融機関の独自な役割の明確化が大きな課題である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 居城弘: 金融学会報告 金融学会 編. 66. 3-11 (1988)
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[Publications] 居城弘,海保幸世,紺井博則: "世界市場と信用" 梓出版社, 1-306 (1988)