Research Abstract |
初年度において,深部体温計プローブの改良について基礎的検討を行った結果,数値解析およびモデル実験によって,従来のプローブに比べ精度が向上したことを確認した。 次年度においては,改良形のプローブを用いて実際に体温を計測した場合,従来臨床において体温の指標とされて来た舌下温にどれだけ近い値が得られるかを調べることによって,臨床における体温の指標となりうるか否かを評価した。 実験は,健常成人を被験者として,恒温恒湿室内において,室温20℃および25℃,湿度40%とし,深部体温計を前額部に装着し,IC温度センサ(AD590)にステンレス細線を接続した温度センサを舌下に留置して,それぞれのプローブについて,平衡に達したときの温度を記録した。 その結果,男子21名,女子22名について計測した20℃および25℃における前額深部温および舌下温は,いずれも平均値において0.1℃以内で一致し,前額深部温と舌下温の間に統計的有意差は認められなかった。 この結果は,数値解析およびモデル実験の結果ともよく対応するものであり,結論として,改良形深部体温計プーロブを使用することにより,ほぼ0.1℃以内の誤差で,下舌温と等価な体温計測が可能てあることが確認されたものと考える。 深部体温計は,従来の口中あるいは腕窩の検温と異なり,容易に連続計測ができることが特長であり,すでに多くの施設が体温モニターに使用されている。しかし,外気温の影響が若干認められること,従来の体温の指標である舌下温との比較が十分なされていなかったことなどのため,広く臨床に受け入れられるに至っていなかった。本研究は,プローブの改良によって精度を高め,舌下温とよく一致する性能が得られることが確認できたことにより,有意義であったと考える。
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