Research Abstract |
本年度は, 森林の水土保全機能の評価に関して, 次の3課題の基礎的な研究をおこない, それぞれ極めて新しい知見, 成果を得ることができた. 1.森林土壌中における浸透流出の機構:森林土壌は著しく孔隙分布の広い土壌であり, この孔隙特性による浸透流出の機構は, 洪水, 渇水, 表層崩壊, 表面侵食の現象を解明する基礎的な問題である. この基本的な浸透流出機構の解明のために, 大孔隙と小孔隙が接したモデル土層を作成し, 浸透流出実験によって, その経路を可視化し, 水理学的解析をおこなった. その結果, 大孔隙に浸透した雨水が, 毛管力により小孔隙に吸引された後, 地下水面近くで大孔隙へ流出することを示し, 水ポテンシャル流動として説明した. 2.森林流域の蒸発散の流域的分布特性:森林の水源涵養機能の評価に対して最も重要な問題である, 流域内での蒸発散量の場所的変化を明らかにするために, 試験流域内の谷部と尾根部で熱収支法による蒸発散量の計測をおこない(サーモダックEによる記録), 晴天日において谷部の蒸発散量が多いことを示した. この原因として, 午前中は, 尾根から谷への熱の移流, 午後は尾根部の乾燥による蒸発散の抑制があることが明らかにされた. 3.森林破壊流域における水土保全機能の変化:林野火災によって森林が破壊された後, 森林の回復に伴う水土保全機能の変化について, 火災直後から3年間の水流出, 土流出の観測調査, 解析をおこなった. その結果, 全体として植生の回復と共に水土の流出は, 減少しているが, 植生の繁茂, 枯死などに関係して水土流出に季節性がみられることを明らかにした. しかし, 流域内での表層土層の場所的変動が著しいため, 小型の侵食実験装置を用いて, 浸透及び受食性の分布を求める水土流出量推定の方法を実用化した. 以上により, 水土保全機能を評価するため, 降雨流出モデルとして, 森林斜面土層の3層モデルを作成した.
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