Research Abstract |
1.スギ材の中から, 典型的な赤心(赤褐色の心材)と黒心(暗褐色の心材)を採取し, メタノール抽出した. 抽出物を溶媒分画により, ポリフェノール画分とテルペノイド画分に分離した. 2.赤心と黒心のポリフェノール画分の色調を比較すると, その差が明確であり, 心材の色調に寄与している化学成分が, この画分に存在することが明らかとなった. 3.ポリフェノール画分をメチル化後, 過マンガン酸カリ酸化し, 得られた生成物をジアゾメタンでメチル化して, ガスクロマトグラフを用いて分析した. その結果, 生成物としてP-メトキシ安息香酸メチル, 3, 4-ジメトキシ安息香酸メチルおよび3, 4, 5-トリメトキシ安息香酸メチルが確認されたが, 赤心と黒心とではその生成比が異なり, 黒心にはトリメトキシ安息酸メチルが特に多いことがわかった. したがって, 黒心の形成に寄与する着色物質は, トリオキシフェニル基を有するポリフェノール類であると推定された. 4.スギ心材の中には, スギレジノール, ヒドロキシスギレジノール, セキリンCなどのノルリグナン類が存在することが, すでに報告されているが, トリオキシフェニル基をもつポリフェノール類の報告はない. したがって, スギ黒心の中に, トリオキシフェニル基をもつノルリグナンなどのフェノール成分が存在するか否か, 確認するための実験を実施する予定である. 5.赤心と黒心のテルペノイド画分の色調は, その差が僅かであった. しかしながら, 両者をガスクロマトグラフで分析すると, モノテルペノイドの構成成分に明確な相違がみられた. これらは, 直接材の色調に関与していないが, 何らかの関連性があるものと思われる.
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