1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62560207
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
小泉 千秋 東京水産大学, 水産学部, 教授 (80017045)
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Keywords | 煮熟イカ肉 / 匂い成分 / 80%メタノール抽出物 / 透析外液 / 遊離アミノ酸 / 4級アンモニウム塩基 / オクトピン |
Research Abstract |
クロロホルムーメタノールで脱脂したイカ外套筋を80%メタノールで抽出し, 抽出液のメタノールを留去後加熱すると, 抽出物はやや刺激臭はあるが, 煮熟イカ肉様の匂いを発した. このことから, 脂質は匂いの発生に関与していないことが判明した. そこで, このメタノール抽出物を透析し, 透析外液と内液とに分画し, それぞれ加熱して官能調査により匂いを調べた. その結果, 透析外液に煮熟イカ肉の匂いが認められた. さらに, この透析外液をAmberliteCG-120で吸着部と非吸着部とに分画し, 匂いを調べたところ樹脂に吸着する画分に煮熟イカ肉様の匂いが認められたが, 匂いの強さは分画前の透析外液に比べて弱かった. これらの結果から, 煮熟イカ肉の匂いは単一の前駆物質から加熱によって発生するのではなく, 性質の異なる複数の成分の加熱時の相互作用により発生するものと思われた. そこで, 加熱により煮熟イカ肉の匂いを発することが明らかとなった脱脂イカ外套筋の80%メタノール抽出物の透析外液の一部を100°C, 30min間加熱処理し, 加熱に伴うエキス成分の変化を調べた. その結果, 加熱処理により減少した成分は遊離アミノ酸ではシトルリン, オルニチン, ヒスチジン, ヒドロキシリジン及びオクトピン, 4級アンモニウム塩基ではトリメチルアミンオキシド及びベタイン, ATP関連化合物ではADP及びAMPなどであった. いっほう, アルギニン及びVB-Nは加熱処理によりやや増加したが, ホマリン, 還元糖及びpHはほとんど変化しなかった. また, Lab値から見た色調の変化もほとんど認められなかった. 今後, さらに分析を重ね, 得られた結果から煮熟イカ肉様の匂を発する人工エキスを調製し, それから発生する匂い成分を明らかにする.
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