1987 Fiscal Year Annual Research Report
In vitroにおけるスキルス胃癌発生の病理学的二段階説
Project/Area Number |
62570158
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
内藤 恭久 浜松医科大学, 医学部, 助手 (10107815)
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Keywords | In vitro / スキルス胃癌 / collagen / 線維芽細胞増殖因子 / collagen産生促進因子 |
Research Abstract |
ひとスキルス胃癌における顕著なcollagen線維増生の要因を, 胃癌細胞が産生すると思われる線維芽細胞増殖促進因子と, collagen産生促進因子の両観点から生化学的に検索し, その一部がほぼ明らかとなった. (1)胃癌細胞の産生する線維芽細胞増殖促進因子の解析:スキルス胃癌の粘膜下組織における線維芽細胞の数は, 正常胃の同部位のものの約4倍多いことが判った. そこで, スキルス胃癌細胞が, 線維芽細胞の増殖を促進するような因子を産生している可能性があるので, 実験操作上, 最も取り扱い易いMKN-45cell line(低分化型腺癌由来)について本因の産生情況を検索した所, 分子量が約8,000, 等電点電気泳動で, pH5.0と4.3にpeakをもつ, 酸性物質であることが判明した. また, 本物質は, 通常培地下での線維芽細胞増殖量の約3〜4倍高いことが判った. (2)胃癌細胞の産生する線維芽細胞のcollagen産生促進因子の解析:実験に供した胃癌細胞株は, 三株共(KATO-III, MKN-45およびMKN-28)TGF-βを産生していることが, NRK細胞株を用いた軟寒天内培養法およびELISA法とによって明らかとなった. このことによって, スキルスにみられる顕著なcollagen線維の増生因子の一つは, 本物質が関与している可能性の高いことが確実となった. 63年度の研究では, (1)胃癌細胞の産生する線維芽細胞増殖因子をさらに特性化する. (2)線維芽細胞のcollagen産生因子の一つであるTGF-βの産生量を, 胃癌細胞の増殖過程との関係で明らかにする. (3)スキルス胃癌細胞の著明なcollagen産生機序を, 線維芽細胞の増殖とcollagen産生とのtime courseおよび因子の産生量との関係で明らかにする. 以上のことから, 63年度には, collagenを指標としたin vitroにおけるスキルス胃癌発生の病因の一つが, ほぼ明らかとなる.
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[Publications] 内藤恭久, 喜納勇: 医学のあゆみ. 142. (1988)
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[Publications] 内藤恭久, 藤分秀司, 早川毅, 喜納勇: 組織培養. 13. 363-366 (1987)