Research Abstract |
本邦においてはATLを含めT細胞リンパ腫の頻度が高く, わが国のリンパ腫は一般に予後不良であるが, T細胞リンパ腫は組織学的に多様性であり, 属々クローン性の確実な指標を欠くことが多い. 各種の単クローン抗体による免疫細胞学的また免疫組織学的検討がなされたT細胞リンパ腫ないしAILD/IBLまたHodgkin病などの類縁疾患の臨床材料から高分子DNAを抽出し, 各種の制限酵素で切断し, ^<32>P標識cDNAprobeを用いSouthern blot法にてT細胞受容体(TcR)遺伝子の再構成の有無を検索した. 同時に可及的に免疫グロブリン(Ig)遺伝子再構成も検索した. probeDNAとしてはTcR遺伝子についてはC_<β1>,J_γを用い, Ig遺伝子についてはJH,Jk,C_μなどを用いた. 未熟リンパ系腫瘍であるT-ALLないしリンパ芽球性リンパ腫(LBL)の検討から, 胸腺分化段階stageIに相当する症例で既にTcR_β鎖遺伝子の再構成をみる症例の存在を認め, またstageII以後の症例では全例で同再構成が認められた. 成熟リンパ系腫瘍であるT-NHL,T-CLL,ATLでは殆んどの症例で, TcR_β鎖遺伝子の再構成を認め, Ig遺伝子H鎖の再構成は認めなかった. しかしATL症例の中に, TcR_γ及びγ鎖は再構成せず, TcR_β鎖のみの再構成を認めたことから, T細胞分化過程でγ鎖再構成はβ鎖再構成に先立ち, そのうちに喪失する可能性が示唆された. また未熟リンパ系腫瘍であるT-ALLないしLBLではTcR遺伝子及びIgH遺伝子の両者が再構成している二重遺伝子型(dual genotype)を示す症例があり, 細胞分化初期の不確定性ないし腫瘍化随伴現象の可能性などが考えられ, 一層の検討を要する. さらに組織学的にHodgkin病(LP1,MC4,MC/L_<,L>,NS1各例)と診断された症例のうち, 4例でTcR_β鎖及びγ鎖再構成を認めた例があり, またAILD9例, AILD-T9例でTcR_β鎖再構成7例, TcRγ鎖再構成6例を認め, これらHodgkin病及びAILD病変とT細胞リンパ腫との類縁性が免疫遺伝子型から推測され, 興味深く, さらに検索を進めている.
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