1989 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス潰瘍発生予防に対するTPN効果についての実験的検討
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62570618
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
久保 宏隆 東京慈恵会医科大学, 第2外科教室, 講師 (70119791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 訓也 東京慈恵会医科大学, 第2外科教室, 助手 (20199524)
吉井 修二 東京慈恵会医科大学, 第2外科教室, 助手 (50200928)
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Keywords | ストレス潰瘍 / プリン代謝 / 高カロリ-輸液 / 尿酸 / フリ-ラジカル / 粘膜下血流 |
Research Abstract |
ストレス負荷時に、TPNを施行し十分なカロリ-と栄養補給が胃粘膜細胞活性にどのように影響するかを究明するために、胃粘膜細胞のプリン代謝への影響について検討した。プリン代謝を知るために、我々はプリン代謝の最終産物である細胞内尿酸値を測定した。水侵拘束ストレス負荷ラットでの胃阻組織中尿酸値の経時的変化を検討した。胃粘膜内の水浸拘束負荷前.後1,3,5,8時間の尿酸値は、胃体部:123±37.2,80.1±11.7,96.4±28.2,88,88.9±24,8.197±55.6ng/mg prote.幽門部:125±23.0,55.9±15.8,81.7±68.9,80.0±18.8,206±61.9ng/mg prote.と両粘膜とも、ストレス負荷1時間までは尿酸値が減少傾向を示し、以後5時間までは有為な変動は示さず低値をしめすが、ストレス負荷8時間では、尿酸値が負荷前値よりも著しく増加した。この時期は、ストレス潰瘍の発生率が100%である。胃筋層においても同様な傾向が見られた。この結果より、 (1)ストレス潰瘍発生に先だって、胃組織全体にプリン代謝系の異常を来していることが分かった。 (2)胃組織中の尿酸の生成量とその組織障害の程度との相関が比較的よいことから、尿酸の生成量と有害なO_2の発生量との間になんらかの相関があると予測される結果がえられた。 この結果を踏まえストレス負荷中高カロリ-輸液(TPN)施行群と非施行群での胃組織中尿酸値の経時的変動について検討した。TPN施行群ではストレス負荷と共に胃体部、幽門部ともに尿酸値は増加することが認められた。この粘膜内尿酸値の上昇の原因として次の2つが考えられる。 1)ストレス負荷により粘膜内代謝が亢進し、TPNによりエネルギ-補給が十分なされため。 2)水浸拘束による組織内anoxiaによりラジカルが発生しキサンチンオキシタ-ゼが生産された為である。TPN施行群の尿酸値の上昇は1が主で、2が従と思われる。このことはTPNがストレス潰瘍発生予防効を細胞プリン代謝の面からも立証したと言える。
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[Publications] 堀訓也: "ラット水侵拘束潰瘍に対する高カロリ-輸液の効果" 東京慈恵会医科大学報誌. 102. 347-366 (1988)
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[Publications] 佐々木龍司: "実験的ストレス潰瘍の成因としての胃組織内尿酸値の変化" 東京慈恵会医科大学報誌. 103. 703-715 (1988)
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[Publications] 久保宏隆: "水侵拘束ラット潰瘍におけるラット胃組織中尿酸値の変動" Cyto-protection&biology. 6. 425-434 (1988)
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[Publications] 青木照明: "MOFの栄養管理-ストレス潰瘍の栄養管理" 最新医学. 44・11. 2302-2307 (1989)