1987 Fiscal Year Annual Research Report
器官培養法を応用した人胃粘膜発癌に関する実験的検討-特に残胃癌発声に及ぼす胆汁酸の影響について-
Project/Area Number |
62570625
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武田 仁良 久留米大学, 医学部, 助教授 (50080742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 一成 久留米大学, 第一外科, 助手 (30178280)
孝富士 喜久雄 久留米大学, 第一外科, 助手 (00178229)
平木 幹久 久留米大学, 第一外科, 助手 (60181153)
黒岩 逹 久留米大学, 第一外科, 助手 (60153392)
橋本 謙 久留米大学, 第1外科, 助手 (00156283)
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Keywords | 残胃癌 / 発癌 / 器官培養法 / ^<14>C-MNNG / ^3H-Thymidine |
Research Abstract |
残胃癌の発生機序については、その発生母地のもつ特異性から、それに起因するいろいろな修飾因子の関与が推測されている。ことに十二指腸逆流液によって生じる残胃粘膜の形態学的変化については興味深い面が多い。本研究では器官培養法を応用し、実際にヒト胃粘膜に発癌剤を作用させることに成功したので、この技術を利用し発癌物質が生体成分に結合する過程で残胃環境が促進的に働くか否かについて検討を行った。研究材料は当科で手術を行った切除胃より原発性胃癌15例、残胃癌8例を対象とした。切除胃の主病巣から離れた部の胃粘膜をatrandom,2カ所以上、2cm^2角を採取、減菌シャ-レにて粘膜下層の疎結合織を剥離したのち、予め37°Cに加温したリン酸緩衝液を用いて、数回の洗浄を行った。採取した人胃粘膜は、1.化学発癌剤の標的細胞として問題となる未成熟細胞の腺窩上皮内局在および増殖帯の態度については、^3H-Thymidineの標識率を用いて検討した。2.化学発癌剤は、14C-MNNGを測定した。その結果、残胃にみられた慢性胃炎は萎縮性変化が主体をなし、萎縮性胃炎における細胞の3H-Thymidine標識率は2時間値で、幽門部14.7±3.6,胃底腺部11.5±4.1と萎縮の程度によりばらつきはみられたが正常粘膜の10.6±2.7,7.9±2.5にくらべ明らかに高値を示した。また残胃粘膜細胞内DNA/mgに結合した141^C141-MNNGを測定したところ正常粘膜の胃底腺部細胞内386±113cpmにくらべ残胃粘膜では566±148cpmと有意(P<0.05)に増加した。さらに発癌剤のオ-トラジオグラフ所見では投与された発癌剤は、胃粘膜腺窩上皮に多数散在しており、残胃粘膜では発癌剤との結合が促進され、標的細胞となる未成熟な細胞が多数出現してくる胃粘膜の萎縮性変化は、残胃癌発生の恰好の背景母地となりうることが示唆された。
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