1987 Fiscal Year Annual Research Report
赤外ラマンスペクトルのシミュレーションを含めた薬物の分子力場計算法の研究
Project/Area Number |
62570964
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
町田 勝之輔 京都大学, 薬学部, 教授 (80025684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 嘉尚 京都大学, 薬学部, 助手 (20093320)
多賀 徹 京都大学, 薬学部, 講師 (00025694)
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Keywords | 分子力場 / 分子性結晶 / 格子エネルギー / 基準振動数 / 安息香酸 / p-フルオロ安息香酸 / 飽和炭化水素 / 力の定数 / 自由エネルギー / n-ヘキサン / ジエチルエーテル / 半値巾 |
Research Abstract |
1) 分子力場計算の結晶への拡張: 分子力場計算に分子間力の効果を加えて結晶性薬物の構造および諸物性をシミュレートすることを目的として, さきに開発した分子性結晶の格子エネルギー, 弾性定数および赤外ラマン活性基準振動数計算用プログラムのパラメーター調節機能を拡張整備した. 本プログラムの性能テストのため, 当研究室でX線解析により構造を決定した安息香酸-p-フルオロ安息香酸混晶をとり上げ, 各成分の純粋結晶および混晶の格子エネルギーを計算した. その結果, 各結晶の構造はよく再現され, かつ混晶がエネルギー的に安定であることが確かめられた. 主要な結晶面についての表面エネルギーの計算結果からも同様な結論が得られた. 水素をフッ素で置換しても分子間相互作用の様相があまり変化しないことは含フッ素薬物の生理機能を追究するうえで畄意すべき点と言える. 2) 力場パラメーターおよび強度パラメーターの整備: 当初の方針ではプログラムの複雑化を避けるため, これらのパラメーターの転用性を重視する立場をとってきたが, それでは双極子モーメント, 分極率およびスペクトル強度の実験値を同時に再現できないことが明かとなった. そこでまず飽和炭化水素についてメチル, メチレン, メチン基の力の定数, 有効電荷およびその流束を独立に評価した力場を用いたところ, 自由エネルギーの温度変化に対して信頼すべき計算値が得られ, 液体窒素温度における固体および常温における液体の赤外ラマンスペクトルが精度よくシミュレートできることがわかった. さらに混合物のスペクトルシミュレーションを目的として, n-ヘキサンージエチルエーテル混合試料の赤外スペクトルを測定したところ, 隣接したバンドのピーク強度に対して大きな非加成性が認められ, これまでのシミュレーションで均等と假定してきた各バンドの半値巾について情報が得られる可能性が示唆された.
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