Research Abstract |
申請者らは低水分系食品の焙焼中に生ずる種々の変化について研究を進めている. 昭和62年度は, 低水分系食品を調整し(クッキー), その原材料の違いと焙焼中の変化をHPLC, GLC, TLCなどの機器分析により測定した. クッキーは, 材料として小麦粉 45%, 糖類 20%, バター 25%, 卵 10%を用い混ぜた後, 30φ×5mmに成形し, 150°Cのガスオーブン中で10分間焙焼して調整した. HPLCによる分析は, クッキーを5倍量の水-メタノール溶液(1:3 V/V)で抽出し, ミリポアで濾過した試料を, カラムはDevelosil ODS-5, 移動相は水-メタノール(6:1 V/V), 検出器は283nmの条件で測定した. その結果, 10ピークが確認され, 特にピーク3, 5, 6が顕著であった. そこで, ピーク3, 5, 6の分取(カラムはDevelosil ODS-15/30および ODS-10)を行い, さらに単離, 精製後, ^1H-NMR, ^<13>C-NMR, IR, UV, FAB-MS, EI-MSなどで構造決定をした. これらの機器分析の結果から, ピーク5は2, 3-ジヒドロー3.5-ジヒドロオキシー6-メチルー4H-パイランー4-オン(DDMP)であり, ピーク6は5-ヒドロオキシナチルフルフラール(HMF)と同定した. クッキー材料のDDMP, HMFの生成に及ぼす影響を調べるために各種クッキー材料を組み合わせ, ブロックバスで焙焼し検討した. その結果, HMFは糖単独でも生成するが, DDMPは糖単独の加熱ではほとんど生成されず, 卵と加熱されると生成することが分かった. クッキーの焙焼によるタンパク質変化の測定にはSDS-PAGEで分析した. その結果, クッキー中のタンパク質は低分子化および縮重合による高分子化が認められた.
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