Research Abstract |
中性のIngenieurから近代社会における「技術者」および技術学すなわちCivil Engineeringの形成過程を明らかにするため, 作業手順としては(1)既に本研究担当者が, ドイツで蒐集してきた資料に加え, 国内, イギリスの資料を蒐集する. (2)その上で, 歴史実証的解析を行なってきた. 資料の蒐集解析については, まず国内については, 大阪中之島図書館の住友文庫, 大阪市立大学福田文庫ならびにSombart文庫関係では, 若干のものを得ただけにとどまった. 東京工大でのCivil Engineer協会の機関誌が, もっとも信頼に足るものであった. イギリス関係では, 新規の研究分野が, いかに制度的に確立していくかという社会制度的連関を解明するために, Royal Societyとの関係, およびイギリス大学教育や技術教育との関連をみる資料を収集した. 既集のMicrofilmは, 焼付をし, 利用しやすい形態にすることができた. この他に, 本研究遂行のための基礎的前提として, スミートンの伝記やスマイルらの工学者伝記類は, 勿論再検討していおいた. 以上の資料収集活動を行いながら, 解析した結果次のような第一次的結果をえた. すなわち, まず従来言われたようには(学説史上), Smeatonが"Civil Engineering"の提唱を行ったという点については, 必ずしも, 文献上の論拠が明確ではない. この点, 歴史上重要な点なので, 「提唱していない」のか, それとも提唱したが文献が未発見なのかは明確にする必要がある. 次年度も引きつづいて追求したい. 次に, 「Civil Engineering」の内容であるがこれは, 最初から内的論理体系を備えていたとは言いがたい. 現実の技術的構成内容を反映したものであり, 従って当時のCivil Engineeringは, さらに分化していく前の過渡的性格を持っていたと言える. さらに「学」の制度的確立過程との連関に, この内的過渡精は, 強い連関性を有していたと結論される. この点は注目すべき点と考えられる.
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