Research Abstract |
1.本研究の目的は, 体育の教授過程を教師と児童・生徒の人間学的ひろがりとして捉え, そこでの両者の意識を把握することであった. したがって, ある意味で方法論の探究さも言うことができる. しかし, 本年度, 各研究機関等への訪問も含めた先行研究の検討によると, 現在実施・研究されている大多数の体育の授業分析法は, あまりにも方法論が先行し, その規定要因たる目標がないがしろにされ, 方法のための方法という現象が生じているように思える. この結果を踏まえ, 本研究において, 最初になされた事は, 研究対象授業での明確な目標の設定であり, その目標に向かっての教師と児童・生徒の自己認識の把握方法の試行であった. 現象学的見地より設定された目標は, 1)世界内存在としての自己の身体の知覚の発達 2)自己と意識の. 識の獲得 3)運動の意味の把握 4)他者との出会いと他者の行動に対する感受性の育成 であった. 2.研究授業は, 本年度4回実施した. これらは, ビデオによって 授業全体の流れ, 教師の行動, 抽出児の行動 が記録された. また, 授業終了時に(1)学習者全員の自己認識に関しての自由記述(2)教師の自己認識の自由記述授業終了後, ビデオ再生による(3)教師の自己認識の変化と抽出児への他者認識の変化の記述 を実施してもらった. 3.2の(1), (2), (3)によって得られた資料は, 現象学的見地により設定された4つの目標に沿って分類され, それぞれの因子を分析・抽出中である. 4.今後は, (1) 3で得られた因子による, 本年度実施の研究授業の再整理と検討, (2)(1)に基づく新たな研究授業の実施, (3)教師, 抽出児, 研究観察者(教師あるいは抽出児の自己認識を, 先に得た因子にもとづいて外部より他者観察), による自己あるいは他者認識の記述 等によって, 体育の教授過程の児童の意識把握の方法を探る.
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