Research Abstract |
スポーツチームを効果的に指導するためには, メンバーの組織行動上の特徴を把握する必要がある. 本研究は, 従来のリーダーシップ論とは異なり, メンバーの自己教育力に視点を当てた質問紙の開発を試みたものである. そのため, 現場で診断可能なSESスケールを作成し, サッカーとラグビー競技を対象に検討してきた. その結果, (1)有効な項目として55項目でよいこと, (2)メンバーの組織行動タイプの診断軸としては, PDS(plan-do-see)因子とD(do)因子でよいことがわかった. そこで, 現在テニスとバスケット競技を加え, 因子の安定性の検討を行なっている. また, (3)チーム成績との関連では, D型よりPDS型の方がよいことがわかった. そこで, なぜPDS型がD型に比べてよい成績を示すのかについて検討した結果, (4)PDS型は, メンバーの自己モニタリング能力が高く, 自信があるのに対し, D型は, 自己成長への志向性は高いが, 自己モニタリング能力や自信が低いことがわかった. つまり, PDS型メンバーは, 総じて自己教育力が高いといえる. また, (5)PDS型メンバーの原因帰属が努力や能力におかれているのに対して, D型メンバーは運に原因帰属を求める傾向が認められた. 以上のことは, PDS型メンバーの心的資質の高さを物語るもので, 現在これが組織の良さからくるのか, あるいは初めから良いメンバーに恵まれたものであるのか検討中である. それゆえ, ハーシィのSL理論をベースにしたチーム指導がどのように行なわれているのか検討した結果, (6)LEADでも, 一応4つの指導タイプ(Telling, Seliing, Participating, Delegting)が確認されたが, 総じて現場指導者はT型が強いと感じていたのに対し, メンバーが指導者になった場合にはT型得点が減少することがわかった. また(7)サロモンの3類型でみると, PDS型はD型に比べて補償型や放任型が増え, 指導の状況対応度が増す傾向が認められた.
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