1988 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア蛋白前駆体の膜透過におけるホスホリパーゼの役割
Project/Area Number |
62580149
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Research Institution | Faculty of Medicine, Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 征夫 大阪大学, 医学部, 助手 (10144453)
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Keywords | ミトコンドリア / プレシーケンス / ATPaseインヒビター / 安定化因子 |
Research Abstract |
ミトコンドリア蛋白前駆体に含まれるミトコンドリアの識別構造とミトコンドリア膜との相交作用について、ATP合成酵素の活性調節因子であるATPaseインヒビターを用いて検討した。すでに前駆体のアミノ末端に存在する識別構造(プレシーケンス)の部分的な(7アミノ酸残基)化学合成オリゴペプチドがミトコンドリア膜に特異的に結合し、脂質膜内に埋め込まれること、その際、膜より脂肪酸が遊離することを観察していたが、本研究では全長プレシーケンスを化学的に合成し、ミトコンドリアとの相互作用を調べ、蛋白透過におけるホスホリパーゼの役割を明らかにしようとした。 遺伝子構造から決定したATPaseインヒビター蛋白のプレシーケンス部分全長と成熟型蛋白のアミノ末端6残基からなるペプチドを合成した。このペプチドはミトコンドリアの酸化的燐酸化反応を脱共役させることが示された、前述のオリゴペプチドは、脱共役を起こさず、従って脱共役は脂肪酸の遊離によって起こるものではないと考えられる。また、オリゴペプチドあるいはアポチトクロームcで観察された脂肪酸の遊離は、特殊な条件で起こる可能性が強く、膜透過におけるホスホリパーゼの活性化の役割については不明である。 全長プレシーケンスによる脱共役は一時的であり短時間内で修復されること、その持続時間は添加したペプチド量に依存することがわかった。このことは別のATP合成酵素の活性調節因子である15K安定化因子についても同様であった。この蛋白はプレシーケンスをもたず、分子内認識配列をもつと考えられるが、精製標品を変性させた場合のみ、ミトコンドリアの脱共役を起こした。膜透過のためには前駆体のunfoldingが必要であることを考え合わせると、ここで観察した脱共役はH-の流入であり、これが前駆体の透過に共役している可能性が強いと結論される。
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Research Products
(2 results)