1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63301001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
滝浦 静雄 東北大学, 文学部, 教授 (80004026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 正幸 東北大学, 文学部, 助教授 (40107173)
野家 啓一 東北大学, 文学部, 助教授 (40103220)
篠 憲二 東北大学, 文学部, 助教授 (20086119)
上妻 精 東北大学, 文学部, 教授 (10054298)
柏原 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (30008635)
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Keywords | 他我 / 他者 / 自我 / 言語行為 / 身体 / 指示 |
Research Abstract |
われわれの研究課題である他我問題は、従来、とりわけ古代・中世にあっては主題的に論じられることがほとんどなかった。それゆえ、63年度の研究活動はます、なにゆえに哲学においていま他我を問題にしなければならないのか、それを問題とする際の基本的な視座・方法はどのようなものであるべきか、に関する、研究代表者である滝浦の基調報告により開始されることとなった(第一回合宿)。滝浦が協調した論点は次のとおりである。(1)対象言語のレベルに「我」の存在を求めることは不可能。(2)純粋なCogitatio=cogitatumの自己指示・言及ということはありえぬ。(3)自己指示は身体的存在のみが、他者との言語的関わりの中でなしうるもの。(4)「I」の用法の習得は、「you」の用法の習得と相関的-。これを受けて今年度は、各研究分担者が専門分野に応じてそれぞれの時代を担当し、代表的な哲学者の思想に対して他我問題の視点からあらたな検討を加える作業に従事した。 このうち宇佐美は、他者理解を道徳的評価の問題場面において取り上げ、他者の行為を道徳的視点から理解するにあたっての不可欠の前提となる実践的推論のありうべき構造を、ハーマンを手懸かりにしながら素描してみせた。また野家は、クワインのホーリズムを下敷にしつつ、他我問題を徹頭徹尾言語の意味理解の視点からとらえるべきことを提唱し、自他の非対称性についても言語行為における機能的な異種性としてあくまで語用論的次元において問題にすべきであること、この観点からすればむしろ自他の等根源性といった事態にこそ着目すべきであることを主張した。これに対しては、まさにその都度言葉に耳を傾け言葉を発するほかないこの私になんらかの固有性というものは問題とならないのか、それはどう位置づけられるのか、といった問題が今後の課題とされた(第二回合宿)。
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[Publications] 野家啓一: 季刊思潮. 1. 74-93 (1988)
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[Publications] 柏原啓一: 「大学キリスト者」紀要. 6. 16-20 (1989)
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[Publications] 新田義弘: [図書]現象学と解釈学(上). 3-37 (1989)
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[Publications] 篠憲二: 思索(東北哲学研究会). 21. 1-23 (1988)
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[Publications] 天野正幸: 哲学雑誌(哲学会編). 103-775. 80-98 (1988)
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[Publications] 宇佐美公生: 分化(東北大学文学会). 52-1・2. 1-19 (1988)
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[Publications] 滝浦静雄: "メタファーの現象学" 世界書院, 1-280 (1988)