1988 Fiscal Year Annual Research Report
変貌する社会環境下における公害・職業病被災者の生活史及び社会史に関する研究
Project/Area Number |
63301019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 喜比古 東京大学, 医学部, 助手 (10174666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉沢 秀博 東京都老人総合研究所, 社会学部, 研究員 (60201571)
坂岡 庸子 熊本短期大学, 社会科, 助教授
牧野 忠康 長野大学, 産業社会学部, 助教授 (40199659)
片平 冽彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (30092399)
松井 和子 東京都神経科学総合研究所, 社会医学部, 主任研究員 (10073082)
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Keywords | 公害 / 職業病 / 慢性・遅発性の健康影響 / 病人・家族の生活の質と生活被害 / 生活史 / ライフコース / 社会的対応 / 被災者運動 |
Research Abstract |
わが国の高度経済成長期に多発した公害・職業病の慢性・遅発性の健康影響とそれに伴う生活被害の実態を、「低成長」下の企業、行政、医療機関、一般住民、労働者の対応との関係において明らかにすることを目的として、3種類の調査を実施した。 1.水俣病関連の調査によっては、第1に、汚染地域における比較的初期の重症患者以外に、汚染地域とその周辺地域の住民、さらに全国に移住した人々の間に広く慢性ないし遅発性の健康影響が発生し、なお拡大していることを示唆した。第2に、そうした患者の間には、一般に健康障害に伴って生じがちな就労等生活への影響とともに、企業、行政の独特な対応に起因して、患者がとり結ぶあらゆる人間関係に深刻なゆがみが生じていることを明らかにした。 2.わが国の重症じん肺による労災受給者の全数に近い患者を対象とする調査によって、第1に、彼らの生活意識には、この職業病のもつ不可逆・進行性ゆえの重苦しさと死への不安が伏在していること、及び、社会的な規制による患者の行動・生活制限が「病人の生活の質」を著しく低下させていることを明らかにした。第2に、追跡調査のためのデータベースを作成するとともに、昨年度内死亡者の特性を明らかにした。3.北九州在住のじん肺患者(労災非受給者を含む)とその家族の調査を通して、第1には、現在の生活状況がそのライフコースにおける生計手段および家族形態の変化により大きく左右されていることを明らかにした。第2には、家族内発病という危機を経験しながらも家族関係が良好に保たれているケースが少なくなく、今後ABC-Xモデルにもとずく分析により適応の条件を探ることができるとの見通しを得た。 以上の調査と平行して、被災者の救済を求める運動についての研究計画を作成し、次年度頭初からの本格的な調査の実施に備えた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 片平冽彦: International Forum on the Minamata Disease. 68-69 (1988)
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[Publications] 城戸あつ子: 第61回日本社会学会大会 報告要旨集. 113-114 (1988)
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[Publications] 松井和子: 社会問題研究または労働科学.
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[Publications] 礒田朋子: 活水論文集. 32集. (1989)
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[Publications] 松井和子: "昭和62年度じん肺患者死亡実態報告" 全国じん肺患者同盟, 1-80 (1989)