1989 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌の発生様式ー単中心性か多中心性かーに関する研究
Project/Area Number |
63440032
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鵜浦 雅志 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (10175226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮腰 久嗣 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (10143893)
小林 健一 金沢大学, 医学部, 助教授 (70019933)
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Keywords | 多段階的進展 / クロ-ン性発癌 / 組込みDNA再配列 / 肝細胞癌 / ウッドチャック肝炎ウイルス |
Research Abstract |
ウッドチャックWC117のサザンブロッティングの結果ではEco RI消化の4.5kbpバンドがT2,T3,M4,M6で、Eco RI消化の4.0kbpのバンドがM4とM6で共通であった。T3,M4,M6は近接した位置関係にありかつサザンブロッティングで一部共通のバンドを有していたことより、同一の起源とその後の個別な増殖を示唆するものと思われた。WHVキャリア-状態にあるウッドチャックCW577には径10mm以上の肝癌Tが2個(T1とT2)、同時に径10mm未満の肝癌Mが10個(M1ーM10)認められた。terminalな状態であったこと及びT1を中心に播種されたような位置関係に小腫瘍Mが散在していたことより肝内転移が強く疑われた。癌部の組織像では核胞体比の増大、索状構造の不規則化が認められ、エドモンドソンの2に相当すると思われ他の癌部との著しい差は認められなかった。CW577のサザンブロッティングの結果では、Eco RI消化の4.5kbpバンドがT1、M1、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9で共通に認められ、HindIII消化の4.5kbpバンドがT2、M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、M9で共通に認められた。肝内転移と思われた10個の小腫瘍のうちM4、M5、M7の3個のみが組み込みパタ-ン自体が同一であった。以上の結果は多発性発癌が多起源的すなわちmultiーoriginな発癌及びそれぞれの門脈播種であることを支持するものである。しかしCW577の様に一見して肝内転移と思われる播種された小腫瘍においてさえも、同一な組み込みパタ-ンを示すものが少なかった事実からはDNAの組み込みパタ-ンの異なりから直接的に、それぞれが多起源的発癌と考えて良いのか否かが問題として残った。即ち明らかに肝内転移と思われるごく近傍の小さな腫瘍でさえもDNAの組み込みにおいてこれだけの再編成をおこしうるという視点からは、遠く離れた腫瘍もunicentricな腫瘍のmultiーstepな発育である可能性も考えられる。近年の小肝細胞癌の病理学的検討成績などより多発性肝癌は一つの腫瘍の多段階的発育と各段階での肝内転移とする考えについて、今後さらに検討を要するものと思われた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 鵜浦雅志: "ウイルス学的診断法の進歩" 臨床病理. 36. 130-134 (1988)
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[Publications] 鵜浦雅志: "肝硬変より肝細胞癌への進展の危険因子" 日本臨床. 46. 225-229 (1988)
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[Publications] 鵜浦雅志: "肝癌" Annual Review消化器. 174-179 (1989)
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[Publications] 鵜浦雅志: "肝硬変症の合併症とその対策ー肝細胞癌" 消化器病セミナ-. 36. 180-193 (1989)
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[Publications] Atsushi Shimoda: "Clonal Origin of Mammalian Hepatitis B Virusーrelated Hepatocellular Carcinoma" Journal of Medical Virology. (1990)