1988 Fiscal Year Annual Research Report
李朝時代仏教絵画の調査研究ー在銘作品を中心としてー
Project/Area Number |
63450009
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊竹 淳一 九州大学, 文学部, 助教授 (10000374)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 法子 九州大学, 文学部, 助手 (40195798)
平田 寛 九州大学, 文学部, 教授 (00036980)
|
Keywords | 李朝時代 / 仏教絵画 / 紀年銘作品 / 様式 / 技法 / 願主 / 施主 / 絵師 |
Research Abstract |
李朝時代の仏教絵画は、意外なほどに製作時期を明示した紀年銘作品が多く、製作時期はもとより、製作背景となった願主や施主、あるいは実際の製作に当った絵師の存在を明らかにしてくれて、朝鮮半島ばかりでなく、東アジアの仏教絵画史を考察するうえで貴重である。しかしながら、これまでの李朝時代の仏教絵画については、大作であっても、図像的解釈が明確にならず、また、絵画技法的にも麻布地に粗い顔料を使用して製作した低級な作品であるという評価がなされてきた。 本研究において、これまで収集した李朝時代の仏教絵画における紀年銘作品を分析したとき、これまで行なわれてきた評価と異なり、李朝時代の仏教絵画は重層的な存在で、多様な画風をもっていることが次第に明らかになってきた。それは、(1)王室や貴族層が顔主や施主となって製作された作品で、図像的には高麗時代以来の伝統的な図様を継承しており、いずれも絹本地で小ぶりなものが多く、極めて高く優れた絵画技法を駆使して描かれており、製作にたずさわったのは宮廷所層の絵師であったと考えられる。これらの作品は、李朝時代初期に作せりたものが多い。(2)僧侶や民衆層が願主や施主となって製作された作品で、図像的には李朝時代特有の仏教経典のみで解釈できない多様な図様が使われ、多くが麻布地で大ぶりなものが多く、いくぶん疎荒な絵画技法で描かれており、製作にたずさわったのは民間の絵師と考えられる。これらの作品は李朝時代中期以降に作られたものが多い。 これまで極めて単一的にとらえられてきた李朝時代の仏教絵画を紀年銘別に整理することにより、製作背景ばかりでなく様式的にも技法的にも多様であったことが明らかになってきた。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 菊竹淳一: 大和文華. 80. 17-35 (1988)
-
[Publications] 小林法子: 福岡県史 福岡藩(三). 3. 343-398 (1988)
-
[Publications] 小林法子: 民族藝術. 4. 90-101 (1988)