1988 Fiscal Year Annual Research Report
国際環境の変動と農業政策公共財政論と比較政治学の視点から
Project/Area Number |
63450073
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
溪内 譲 千葉大学, 法経学部, 教授 (70009778)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 朗 千葉大学, 法経学部, 助教授 (80134344)
宮崎 隆次 千葉大学, 法経学部, 助教授 (10113870)
唯是 康彦 千葉大学, 法経学部, 教授 (90143255)
前田 康博 千葉大学, 法経学部, 教授 (00008955)
石田 雄 千葉大学, 法経学部, 教授 (80012996)
|
Keywords | 公共財政 / 農業 / 貿易体制 / 比較政治 / 行政学 / 国際政治 |
Research Abstract |
公共財政と農業保護のディレンマについて、国際貿易体制と国内の農業政策との調整、および農業政策における公共財政の有効性を中心に検討した。対象地域は1.先進工業国、とりわけ米国、フランス、デンマーク、2.第三世界と社会主義圏、特にフィリピン、とソ連、そして3.日本である。現在の作業状況では、三つの点が確認された。第一に、農業政策における公共財政の役割は、生産規模や生産コストなどの経済的要因によって説明できない。それはすぐれて政治的諸変数の帰結であり、政治体制の形態によって説明される。作付規模を例にとれば、規模の大小で生産性を説明できないのはもちろん、国家財政による補助の大きさとも相関がない。総じて作付が小さいほど小口の補助が多く作付が大きいほど国外市場開発のための国家による支援に傾くとしても、これらは生産者がどのように政治的に組織化しているか、また利益団体の利益表出に政策決定がどれほど敏感であるかによって大きく異なっている。第二に、公共財政の補助・介入と生産性との間には一義的な因果関係がみられない。その意味で、補助による生産性拡大も、逆に補助廃止による競争力強化も、ともに一般的仮説としては成り立たない。第三に、農業生産に関する国際協調の制度化は、他の問題領域における協調とは全く独立している。ECの例にみられるように、工業製品において貿易紛争が存在しなくても、農業問題は浮上するし、逆に工業製品に関する紛争を「棚上げ」しても農業問題の解決が可能である。米国を中心に主張される「リンケージ」政策の現実の効果は小さい。次年度に繰り越された課題としては、第一に戦間期の農業政策の展開について日本を含めた比較をおこない、前記の諸点の歴史的起源をあきらかにすること、第二に国際貿易体制の中で農業問題を位置づけること、があげられる。以上の作業を経て次年度に論文集としてまとめる予定である。
|