C型インフルエンザウイルスの抗原変異に関する分子生物学的研究

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 63480156
• Research Institution: Yamagata University
• Principal Investigator: 中村 喜代人 山形大学, 医学部, 教授 (00125775)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 菅原 勘悦 山形大学, 医学部, 教務職員 (60110673) ; 西村 秀一 山形大学, 医学部, 助手 (50172698) ; 北目 文郎 山形大学, 医学部, 助教授 (40004676)
• Keywords: C型インフルエンザウイルス / 抗原変異 / HE遺伝子の塩基配列 / HE蛋白のアミノ酸配列 / モノクローナル抗体

Research Abstract

我々は本邦で分離されたすべての株について、オリゴヌクレオチド・フィンガープリント法による遺伝子解析と抗HE単クローン抗体による抗原解析を併用することによって、同じ時期に分離されたウイルスでさえそのほとんどが系統を異にすることを明らかにした。ところが興味深いことに、1982〜1983年に近畿地方各地(京都、奈良、兵庫)で3株のC型ウイルスが分離されたが、そのいずれもが非常によく似た抗原性と遺伝子構造を持っていた。これらの株に似たウイルスは以前には一切分離されていない。これらの観察を基に我々は、従来の本邦分離株とは抗原性を異にするウイスルが1982年に持ち込まれ、同地区に急速に拡がったと推測している。この仮設を立証することを目的として、近畿3株の抗原性と遺伝子構造をさらに詳細に解析し、以下の結論を得た。
1.近畿3株のHE遺伝子の塩基配列を、合成オリゴヌクレオチドをプライマーとするdideoxy chain terminator法で決定したところ、三者の配列は酷似しており、その違いは0.4%にとどまっていた。さらにこれらの配列を欧米分離株と比較したところ、1980年に米国で分離されたC/Mississippi/1/80株に非常によく似ている(ホモロジー、98.4%〜98.6%)ことが判明した。
2.そこでC/Miss/1/80株のHE蛋白に対する単クローン抗体を用いて同株と近畿3株の抗原的な関係を調べたところ、それらが全く同じ抗原性を持つことが明らかになった。
3.種々の本邦分離株やMiss/1/80株に対する免疫血清を作製し、それらを用いて抗原解析を行ったところ、Miss/1/80関連株と既存の株との抗原性の違いは、ポリクローナル抗体でも識別し得るほど大きいものであることが判明した。
以上の成績は、上記の仮説の妥当性を支持するものである。

Research Products

• [Publications] 菅原勘悦: Journal of General Virology. 69. 537-547 (1988)
• [Publications] 西村秀一: Journal of General Virology. 69. 2545-2553 (1988)
• [Publications] 八戸茂美: Journal of General Virology. (1989)
• [Publications] 西村秀一: Journal of General Virology. (1989)
• [Publications] 安達和仁: Virology.