1990 Fiscal Year Annual Research Report
網膜芽細胞腫の分子生物学的研究 網膜芽細胞腫と正常細胞の細胞融合実験
Project/Area Number |
63480393
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
戸塚 清一 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (50107629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 淳 信州大学, 医学部, 助手 (00168246)
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Keywords | 網膜芽細胞腫 / 細胞融合 / 細胞培養 / 分子生物学 |
Research Abstract |
網膜芽細胞腫とヒト線維芽細胞の細胞融合により得られた細胞融合体は、全て線維芽細胞様の形態と性質を示した。本腫瘍が腫瘍発現遺伝子の付加により生ずる腫瘍であるならば、細胞融合体は腫瘍細胞と類似した形態や性質を示すのに対し、本腫瘍が調節遺伝子の欠損により生ずる腫瘍であるならば、欠損遺伝子は正常細胞より補われ細胞融合体は正常細胞と類似した性質を示す。しかるに本実験で細胞融合体が全て線維芽細胞様の形態と性質を示したことは、本腫瘍が遺伝子欠損により生ずる腫瘍であることを結論付ける。その後細胞融合体の増殖は低下したため、細胞融合体のDNA検索や軟寒天培地での増殖能の検討は行なうことができなかった。 一方網膜芽細胞腫の臨床例3例(片眼性1例,両眼性2例)を経験し、培養株であるY79と同様のRPMI1640を用いた培養液と、PolyーDーlysine等で表面処理し接着しやすくした培養皿を使い細胞培養を試た。その結果、1例では17ケ月以上を経過した現在でも一部の細胞の生存増殖がみられている。培養の過程では2種類の細胞が確認されており、1つは紡錘型の細胞であり、他は長い突起を有する細胞である。前者は増殖能も高く線維芽細胞様であり、後者は神経細胞様で増殖能に乏しく、次第に減少し現在では死滅している。現在までY79様の小型球型の細胞の出現は認められていない。 また研究代表者がヌ-ドマウス眼内に初代培養し、その後皮下に継代している網膜芽細胞腫の株につき、細胞培養への導入を試ているが、未だ成功をみず、目下努力しているところである。 網膜芽細胞腫とマウス線維芽細胞間の細胞融合体を凍結保存より融解し細胞数を大きくしてヌ-ドマウス皮下に移植し腫瘤形成能を検討しているが、結果が安定せず、細胞数、注入法など検討している。
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[Publications] 戸塚 清一,George Inana: "網膜芽細胞腫とヒト線維芽細胞の細胞融合" 日本眼科紀要.
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[Publications] 戸塚 清一,小川 保徳,石原 淳: "網膜芽細胞腫の培養の試み" 日本眼科紀要.