1989 Fiscal Year Annual Research Report
発達期網膜・硝子体の生体反応機構の特殊性と病態解明に関する研究
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63480397
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Research Institution | School of Medicine, Keio University |
Principal Investigator |
植村 恭夫 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (30051006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 範行 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (10159395)
田中 靖彦 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (30051551)
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Keywords | ビ-グル犬 / 酸素誘導網膜症 / マクロファ-ジ / コラ-ゲン / 硝子体血管 / 筋線維芽細胞 / 網膜襞 |
Research Abstract |
出生直後のビ-グル犬74匹を使用し、3〜4日間95〜100%の酸素曝露を行い、実験的酸素誘導網膜症の作製を行った。その結果、約50%に網膜病変が出現した。病理組織学的には、網膜から発芽した新生血管は、電子顕微鏡下で、その中に多数のグリコ-ゲンを含み、基底膜構造は明瞭でなく、また硝子体腔へ向うアメ-バ状の細胞突起が認められた。これらの所見は、ヒトの新生血管の所見とよく類似していたが、ビ-グル犬では、周辺部のみならず後極部網膜にも発芽病変が発生し、部位による形態学的な差はみられなかった。 新生血管の周囲には、多数のマクロファ-ジとコラ-ゲン線維が存在した。マクロファ-ジは細胞内に多くのリゾソ-ム顆粒を有し、核の偏位がみられた。コラ-ゲン線維は正常硝子体線維とは形態学的に著しく異なり、直径は太く65mmの規則正しい周期をもち、I型コラ-ゲンであると考えられた。これらのマクロファ-ジとコラ-ゲン線維は、新生血管の管腔が形成され、線維芽細胞等が遊走してくる時期より出現した。したがってマクロファ-ジは新生血管の誘導より、異物の貪食を行っている可能性の方が高いものと思われた。 また一部の個体では網膜血管のみならず硝子体血管の増殖も観察され4眼でこれに沿って網膜襞が形成された、光学顕微鏡および電子顕微鏡下に、網膜襞は増殖した硝子体血管とその周囲のコラ-ゲン線維と強く接着していた。新生血管周囲の細胞の一部は免疫組織化学的にアクチンに対する陽性所見を示し、筋線維芽細胞が存在していると思われた。したがって網膜襞の形成は、コラ-ゲン線維の接着と筋線維芽細胞の能動的な収縮により、網膜が牽引されて生ずることが示唆された。この所見は未熟児網膜症のみならず、発達期の硝子体増殖病変に伴う先天網膜襞の発生機転を研究する上で有用なモデルになり得るものと考えられた。
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[Publications] 東範行、植村恭夫: "乳頭領域の陥凹を伴わない朝顔症候群類似の乳頭部先天異常" 臨床眼科. 43. 1377-1384 (1989)
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[Publications] 田中靖彦: "眼科の基礎ー卒後研修医のためにVI.視覚・網膜機能の基礎4.網膜色素上皮の働き" 眼科. 31. 1233-1238 (1989)
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[Publications] 東範行: "硝子体疾患ー第一次硝子体過形成遺残と家族性滲出性硝子体網膜症ー" あたらしい眼科. 6. 1803-1812 (1989)