Research Abstract |
超電導磁場の生物に及ぼす影響を,培養細胞,妊娠マウスの胎仔ならびにマウスの血清成分について調べた。 1.チャイニ-ズ・ハムスタ-細胞を6.3Tの磁場に15時間曝露後,染色体標本を作成し,2動原体と環染色体の発現頻度を観察した。曝露群対照群共に約100細胞中の異常染色体を持つ細胞は対照群5.5%,曝露群1.6%で,両者の間に有意差はみられなかった。 ^3Hーウリジンを取り込ませた細胞の磁場曝露中の ^3Hの細胞外への流出量から細胞膜の透過性を調べた。対照群に比べ,1時間曝露群で0.96,2時間で0.87と流出量の低下がみられ,膜の透過性の低下が示唆された。 2.マウス血清成分の変化は,総蛋白,トリグリセライド,グルコ-ス,総コレステロ-ル,HDLーコレステロ-ル,尿素窒素について,ビジョン・アナライザ-で分析した。C3Hマウスを6.3Tの磁場に2時間曝露後,0,1,2,3,4週目に〓殺し,血清を採取して上記指標を測定したが,対照群との間に差はみられなかった。体重,肺,胸腺,肝,脾,腎重量についても同様の結果が得られた。 3.マウス胎仔の催奇性に及ぼす磁場の影響については昨年に引き続き例数を増やし,主として骨格異常について検索した。妊娠マウスを,胎仔の主要器官の形成期である妊娠7日目から14日目まで毎近1時間6.3Tの磁場に曝露し,18日目に〓殺して胎仔を取り出した。皮膚,臓器などを除去し,骨格の2重染色を行ない,骨格の骨化状態,過剰助骨などを実体顕微鏡で観察したが,対照群との間に統計的な有意差はみられなかった。 これらの結果は,6.3Tという強磁場でも,静磁場の生物学的影響は無視できることを示唆している。
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