1989 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸海域の生産力を高めるための鉄の役割に関する研究
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63490002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松永 勝彦 北海道大学, 水産学部, 教授 (90001619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 勲 北海道大学, 水産学部, 助手 (00195455)
久万 健志 北海道大学, 水産学部, 助手 (30205158)
梶原 昌弘 北海道大学, 水産学部, 教授 (20001604)
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Keywords | 鉄 / スプリングブル-ム / 光還元 / 有機酸 / 植物プランクトン |
Research Abstract |
1.藻類は溶存種の鉄を取り込むという考え方をすると、粒状鉄と平衡で溶存する溶存鉄について、溶解度と溶解速度についての実測値が必要である。溶解度については、20℃で0.048μg/lのFe(OH)^+_2が溶存することがわかった。溶解速度については、粒状鉄濃度が1,3,5μg/lにおいて、それぞれ0.0030、0.010、0.017μg/l・dayの値が得られた。即ち、海水中の粒状鉄濃度が1μg/lの時には、平衡で溶存していた溶存鉄が藻類に摂取されてしまうと、10日以上かからないともとの平衡にもどらないことを意味している。 2.粒状鉄と平衡で溶存する溶存鉄では、スプリングブル-ム時には、溶存鉄が不足すると考え、溶存鉄を供給する別の機構を考え、室内実験ではシスチンと紫外線で鉄がFe^<2+>に還元されることがわかった。しかしながら、シスチンが最も多く存在すると思われるブル-ム時にシスチンの測定を行ったところ、最大20nM程度しか存在しなかった。室内実験では50μM存在しないと還元が起こらないので、さらに還元物質を検討した結果、ヒドロキシカルボン酸、特にグルコン酸、グルコン酸1,4-ラクトン、グルカル酸が1μMで紫外線照射で著しく鉄を還元することが明らかとなった。還元されるFe^<2+>の検出感度が低いため、1μM以下の有機酸では実験は出来なかったが1μM以下での還元も十分に起こりうるものと考えられる。珪藻培養液に紫外線を照射後、HPLCでヒドロキシカルボン酸(グルコン、グルカル酸等の分離はまだ未解決)が100μM程度検出された。本年度は海水中の有機酸、粒状鉄を測定し、Fe^<2+>への還元率を推定する予定であったが、有機酸の定量法が報告されていないために、その分析法に時間がかかり、天然試料が分析するに至っていない。今後、有機酸の分離は困難かもしれないが、海水試料を定量することにより、その海域の還元率を推定する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Nakabayashi,S.,Matsunaga,K.et al.: "Existence of dissolved Fe^<2+> in a spring bloom at Funka Bay." Bull.Japan Fish.Oceanogr.53. 128-130 (1989)
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[Publications] 工藤勲、松永勝彦: "基礎生産力を高めるための各態鉄の効果 昭和63年度日本水産学会秋季大会 昭和63年10月"
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[Publications] 鈴木祥広、北川知子、工藤勲、松永勝彦: "フルボ酸を含む河川水中のFe(II)の定量法 日本化学会北海道支部1989年夏季研究発表会 平成元年7月"
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[Publications] 久万健志、中林成人、松永勝彦: "鋼鉄製増殖礁の効果-1 海水中における粒状鉄の溶解速度 平成元年度日本水産学会秋季大会 平成元年10月"
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[Publications] 久万健志、中林成人、松永勝彦: "鋼鉄製増殖礁の効果-II 海水中の粒状鉄からの溶存鉄への還元機構 平成元年度日本水産学会秋季大会 平成元年10月"
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[Publications] 松永勝彦、鈴木祥広、工藤勲: "鋼鉄製増殖礁の効果-III 鉄増殖礁からのFe(II)の拡散 平成元年度日本水産学会秋季大会 平成元年10月"
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[Publications] 松永勝彦、北川知子、鈴木祥広: "鋼鉄製増殖礁の効果-IV コンブ、ウニに対する効果 平成元年度日本水産学会秋季大会 平成元年10月"
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[Publications] 松永勝彦、久万健志、渡辺浩基、鈴木祥広: "鋼鉄製増殖礁の効果-V マコンブによる鉄の取り込み速度 平成2年度日本水産学会北海道支部例会 平成2年1月"