1989 Fiscal Year Annual Research Report
1910年代〜20年代の中国の社会構造-とくに両湖を中心として-
Project/Area Number |
63510203
|
Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
清水 稔 佛教大学, 文学部, 助教授 (00093039)
|
Keywords | 反動復古と新文化運動 / 帝国主義と軍閥 / 五四運動の思想的前提 / 辛亥革命の挫折と新文化運動 / 革命の主体の確立と自我の確立 / 専制と民主 |
Research Abstract |
辛亥革命は革命の実質を残さぬままに挫折した。それは長い革命闘争の末に樹立された共和制の実権が袁世凱らの軍閥勢力に奪われたことを意味する。本年度は、袁世凱を頂点とする専制と反動復古の歴史過程、およびそれを打ち破ろうとした民主と科学の運動、つまり新文化運動を考察した。袁世凱の独裁への野心は、国民党の指導者宋教仁の暗殺を契機として露骨となり、第二革命を圧倒的な武力で鎮圧し、国民党の非合法化、政治・社会・文化の全面にわたる復古を行った。その象徴となったのが1915年後半の帝制復活運動と袁世凱の皇帝即位であった。一方、第一次世界大戦の勃発とともに日本の中国侵略政策が強化された。それを端的に示すものが二十一か条要求であった。この事態の本質は袁世凱なきあとも変わらなかった。袁以後の北京政権を掌握したのは段祺瑞を始めとする反動的な軍閥勢力であり、彼らは、西原借款に象徴されるように帝国主義との癒着を一層強化していった。また1917年の張勲の復辟は反動復古の根強さを衝撃的に示したものであった。こうした内外からの圧迫を、人びとは暗黒と呼んだ。この暗黒の現実から、真の意味の革命の主体をどのようにして確立するか、これが辛亥革命の挫折と反省から生まれた中心課題であった。この課題に応えようとしたのが雑誌『新青年』に結集した青年知識人であった。彼らは、民主と科学をスロ-ガンに、専制と迷信の旧文化を全面的に否定し、自我の確立を変革の根本に据え、西洋近代をモデルとした中国の革新を呼びかけた。いわゆる新文化運動である。専制を助長し個我を束縛するものとして、まず儒教が批判され、さらに旧文学が否定された。儒教倫理の否定は家族制度批判を呼び、婦人解放が叫ばれた。こうした新文化運動を前提として1919年の五四運動が全国的展開をみるにいたったのである。
|
Research Products
(1 results)