1988 Fiscal Year Final Research Report Summary
アーケイック時代のギリシア史とローマ史の比較史的研究
Project/Area Number |
63510212
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
History of Europe and America
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石川 勝二 愛媛大学, 教育学部, 教授 (60036390)
|
Project Period (FY) |
1988 – 1990
|
Keywords | アーケイック時代 / ギリシア史 / ローマ史 / ローマ / アテナイ / ラウィニウム / 植民市 / イタリア |
Research Abstract |
アーケイック時代のギリシア史とローマ史の比較の重要性は最近になってようやく気づかれはじめた。もっともギリシア史もローマ史もともに古典古代史として一括して捉えられてきたように、歴史の類似性ははやくから認められていたが、同時にギリシアのポリス、とりわけアテナイはポリスの歴史に終始したのに対して、ローマは-ポリスから出発してイタリア半島を征服したばかりか、世界帝国を築いたというちがいがはやくから指摘されていた。本研究は、このような過去の歴史観を一応受け入れつつ、なおアーケイック期という、いわば国家の活成期にかぎりギリシア史とローマ史の相違を明らかにすることをめざした。 都市(ポリス)の形成期については、最近イタリア半島について、ローマやラウィニウムの発掘によって、かなり多くのことが明らかにされている。都市においては宗教的な儀式の場所や神殿が最古の時代より重要な場所として認められ、しかも都市生活にとって重要な役割を果していたことがあきらかにされた。次に都市建設者とみなされる伝説的人物の墓が都市の最も重要な位置に置かれている場合が多くあり、都市の祭儀と密接に結びついていたことを示している。ホメロス『オデュッセイア』(い-4-10)に描かれたギリシア人のアポイキア建設の様子と全く一致する。これはギリシア史とローマ史の類似性と捉えることもできるが、むしろギリシア人の影響がこの古い時代においていかに強かったか、とりわけかれらの植民市建設の果たした役割の重要性を如実に示すのである。 しかし前6世紀以降のギリシア史とローマ史は大いにちがったものになった。前600年ころのイタリアは60の防備をもつ都市国家が存在し、つづく2世紀間にローマはそのうちの45を征服した。そして前4世紀以降ローマは多数の植民市をイタリア半島に建設し、イタリアの支配を本格的に開始し、アテナイの歴史とはちがった展開をみせてゆく。
|