1989 Fiscal Year Annual Research Report
自然と人為的再生植物群落における物質(塩類)循環の比較研究
Project/Area Number |
63540520
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中根 周歩 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00116633)
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Keywords | 主要塩類 / 塩類循環 / 山火事 / 自然再生植物群落 / マツ林 / 水循環 / 溶脱 / エアロゾル |
Research Abstract |
本年度は、広島県江田山火事跡地の自然再生植物群落(A区)と人為的再生植物群落(クロマツの植林、B区)において、雨水にともなう主要塩類(Ca^<2+>)の循環比較の調査を昨年度から継続しこれを整理・総合する事によって、両区の植生が生態系再生に果たす役割を比較、考察した。また、雨水を通じての塩類インプットのうち、付着エアロゾルによる塩類のインプットと、植物体からの溶脱による塩類のインプットの区分を、C区(一部人為再生群落)で行った。大型ビニ-ル袋をかぶせ、エアロゾルの植物体への付着を防ぐ固体(晴天時はビニ-ル袋をかぶせ、雨の降る直前にこれをはがした)と、ビニ-ル袋をかぶせない固体のそれぞれの樹幹流量、林内雨量を測定した。そして、これらに含まれる塩類濃度を分析し、その量を求めた。A区とB区の水の動態を比較すると、遮断量はA区では16.3%、B区では7.3%となった。A区、B区とも森林の回復年数や地上部現存量はほぼ同じにもかかわらず、A区の方がB区よりも二倍以上の遮断能力を持つという事がわかった。A区において、雨水によるエロ-ジョンを防ぎ、降水時の河川流出量を減少させ、土石の流亡を防ぐ機能が大きい事は明らかである。一方、塩類の動態をA区、B区について比較すると、株床への供給量はCa、K、MgではA区の方がB区よりも大きかったが、Naに関してはB区の方がA区よりも約1.6倍大きかった。Ca、Mg、Kは、Naに比べて、樹体からの塩類溶脱が自然林で盛んに行われていることがわかった。B区で樹体濃度の低いNaの林床供給量が多いということは、エアロゾルによるインプットの量はB区の方が多いといえる。しかし、植生にとって主要な元素である、Ca、K、Mgに関してはエアロゾルによるインプットは、自然林の方が少ないが、樹体からの溶脱を含めた総インプットは大きく、A区で塩類の循環が活発に行われていることが予測された。
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[Publications] Tsuneaki Anbashi: "Comparative study of the cycling of major nutrients between natural regenerated and planted forests at burnt area" Proceeding of the V International Congress of Ecology. (1990)
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[Publications] Kaneyuki Nakane: "Dynamics of water and major nutrient cycling with the vegetation recovery during ten years following forest floor." Proceeding of the V International Congress of Ecology. (1990)