1988 Fiscal Year Annual Research Report
有機化合物(アルコール系)を用いたCVD法によるダイヤモンド薄膜の高速成長
Project/Area Number |
63550020
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
広瀬 洋一 日本工業大学, 工学部, 助教授 (90049726)
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Keywords | ダイヤモンド / CVD / プラズマCVD / アーク放電 / 薄膜 / 水素原子 / ラマン分光 |
Research Abstract |
1.はじめに 現在、励起状態の活性種(C、CH、C_2等)がダイヤモンド合成に重要な役割を果たしていると考えられている。筆者はアーク放電によって発生させた高温(5000℃以上)のプラズマを用いれば、活性種を短時間にしかも多量に生成できるので、ダイヤモンド薄膜の成長速度が増加するのではないかと予想した。本研究はアーク放電プラズマCVD法によるダイヤモンド薄膜の高速成長と膜の評価について検討を行った。 2.実験方法および実験結果 反応容器を予備排気したのち、反応ガスを所定の圧力200〜400Torrまで導入する。反応ガスは水素、炭素源としてエタノールさらに放電を安定させるためにアルゴンを用いた。基板はシリコンを使った。アーク放電電力は約560Wである。プラズマにより基板はかなりの高温になるため基板ホルダーに冷却水を流して基板温度の上昇を防いだ。実験の結果、約200〜250μm/hの高速成長の値が得られた。また得られ薄膜のX線回折の面間隔と天然ダイヤモンド(ASTM6ー675)の値はよく一致しておりダイヤモンドと同定された。膜質を検討する場合、ダイヤモンド膜中に含まれるグラファイト等の非ダイヤモンド炭素の存在が問題となる。それらを検出する方法としてラマン分光分析が有効であるダイヤモンド薄膜のラマン分光分析の結果、天然ダイヤモンドと同じ1333cm^<-1>のみに鋭いピークが見られ、アモルファスカーボンによる1550cm^<-1>付近のブロードなピークは検出されない。この原因としてはアーク放電のプラズマが高温であるので、プラズマを通った水素(H_2)はほとんど原子状水素(H)に分解され、その原子状水素がダイヤモンドより結合の弱い非ダイヤモンド炭素をエッチングしたためにダイヤモンド薄膜の膜質が向上したと考えられる。
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