1988 Fiscal Year Annual Research Report
制癌剤封入リポソームによる膵癌targeting chemother apyの確立
Project/Area Number |
63570619
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小針 雅男 東北大学, 医学部 附属病院, 講師 (30170369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂村 眞琴 東北大学, 医学部 附属病院, 助手 (10201584)
中村 隆司 東北大学, 医 学部附属病院, 助手 (40201678)
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Keywords | 膵癌 / 補助化学療法 / リポソーム / モノクローナル抗体 / targetin g chemotherapy |
Research Abstract |
膵癌は治癒切除例においても術後高率に肝転移再発を来たし、その原因 として術中からの不顕性肝転移の存在が考えられており、治療成績向上の為には不顕 性肝転移の発生に対し何らかの対策を講じなくてはならない。そこで抗癌剤を封入し たリポソームに抗膵癌モノクローナル抗体を結合した複合体によるtargetin g chemotherapyの膵癌への応用を試み研究を行ってきた。抗CA19 -9抗体結合・ADM封入liposame (lipo【c!~】ADM=Ab) のヒ ト膵癌培養細胞株PK-1に対する抗腫瘍効果を検討した結果として、 1.in vitroでの各接触条件下でlipo【c!~】ADM=Abは、l ipo【c!~】ADMおよびfree ADMより強い細胞障害性を示し、特に生体 内条件に近い低濃度・短時間接触でも有意の細胞障害性を示した。in vivoで の腫瘍増殖抑制効果の検討でもlipo【c!~】ADM=Ab静注群はfree A DM静注群より有意に殺細胞的に働き、組織学的にも強い癌組織破壊像を呈した。 2.静注後5日目までの腫瘍内ADM濃度を経時的に測定することにより、in vivoでの腫瘍集積性を検討した。lipo【c!~】ADM=Ab静注群はli po【c!~】ADMおよびfree ADM静注群よりも常に高濃度を示し、濃度減 少勾配も緩やかで最終的には後2者の2倍以上の腫瘍内濃度を示した。 3.静注後5日目の主要臓器内ADM濃度を測定して体内動態を検討した結果、 liposame静注群はfree ADM静注群より心筋内で若干低値、肝臓内で は逆に3倍近い集積を示した。これは網内系でのtrappingによるものと思わ れたが、不顕性肝転移予防の観点からは、肝転移巣近傍に高濃度に抗癌剤を分布させ ることができ、逆に同濃度のADMを肝内に分布させるにはfree ADM投与量 の1/3程度で済むことになり副作用も軽減しうる。 以上のようにリポソームを用いたtargeting chemotherap yは膵癌切除術中からの補助化学療法として、従来の抗癌剤単独投与に比べさまざま な長所を有していることが判明した。
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