1988 Fiscal Year Annual Research Report
瘢痕組織を持つ顎骨に対する矯正力の効果に関する組織学的研究
Project/Area Number |
63570966
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
八木 實 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (40112601)
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Keywords | 顎顔面 / 瘢痕組織 / 成長発育 / 成長誘導 / 矯正力 |
Research Abstract |
口蓋粘膜に形成した瘢痕組織が、成長期の顔面骨のどこまで影響をおよぼすか、また、人為的に顎骨の成長誘導を行った場合、瘢痕組織にどのような変化を生じるかを組織学的に解明することを目的とする。研究方法:実験は約4カ月の幼犬を用いた。1群:硬口蓋から軟口蓋までの口蓋に裂を作り、その後、粘膜を縫合し口蓋に瘢痕組織を形成。2群:1群と同様の処置後、口蓋を2週間で約5mm側方へ拡大。3群:対照群。骨へのラベリングは、テトラサイクリン(Tc)、カルセイン(Cal)を用い、実験開始4カ月後に屠殺し組織標本を作製した。顎顔面形態の成長に伴う変化は、口腔膜型、頭部X線規格写真によって解析した。 本年度の成果:実験群の口蓋を早期に側方へ拡大することによって、単に侵襲を加えた群と比較して差が認められた。それらは主に、臼歯部から歯槽部後縁までの歯列幅径に見られ約2mmの差となっていた。これらは、矯正力の効果によるものと思われた。 一方、新生骨の形成のラベリング法による観察からは、侵襲を受けただけの口蓋骨はTcやCalの沈着層が薄く、新生骨の形成量が比較的少ないことが分かった。それに対して、側方拡大を行ったものでは、対照群とほぼ等量のラベリング像が認められ、新生骨の増加が確認された。これらのことから、瘢痕化した口蓋粘膜が顎骨の成長を抑制していることが推測される。その一方、矯正力の加わった瘢痕組織では、成長を抑制する因子が関与していないことは明らかである。この点については瘢痕組織と骨組織の接合部を中心に、現在、組織学的に検索を行っている。また今後は、矯正力適用の時期を変えて同様の実験を行い、さらに瘢痕組織の細胞成分や線維性結合組織や膠原線維の走行などについて検討する予定である。
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