Research Abstract |
本研究は,片側性唇顎口蓋裂患者の口腔形態(特に歯列弓)を総合的に把握し,その特徴を求め,今後の治療方針立案の一助とすることを目的とした.資料としては,昭和大学歯科病院矯正科を受診した片側性唇顎口蓋裂患者のうち乳歯列期(Hellmanの咬合発育段階のIIA,IIC)に限定した117名(4歳〜8歳1カ月)の上下顎石膏模型を用いた.歯列弓は,三次元計測機を用い歯に設定された計測点より求め,咬合状態は,前歯部,犬歯部,臼歯部を対象に検討した.その結果以下のことが明らかになった.1)上顎歯列弓をスプライン曲線で表した結果,前方部,側方部のcollapseパタ-ンを,視覚的に複合型を含め8型に分類することができた.2)歯列弓が対称的なnonーcollapse群,collapse部位別に前歯部と側方歯部の3群に分け比較した結果,歯列弓長径では,前方collapse群<nonーcollapse群<側方collapse群の順で大きかったが,歯列弓幅径では,犬歯間幅径および臼半間幅径とも有意な差は認められなかった.しかしながら,幅径/長径比では,歯列弓長径でみられたのとは逆の順序で群間に有意な差がみられた.3)犬歯歯槽部の垂直的成長を検討した結果,側方collapse群は裂側segmentの前縁部の上方偏位が大きく,前方collapse群が最も垂直的には偏位が少なかった.4)対咬関係に関しては,広範囲におよぶcrossbiteが認められた.特に,前歯部,裂側の犬歯部では,水平的ずれが強いほど頻度が高くなる傾向があった.Openbiteは裂側に生じる傾向があり,前歯部,犬歯部それぞれ4.3%,3.4%であった.以上により,乳歯列期の歯列弓のパタ-ンを詳細に分類することが可能であった.またこの時期からすでに上顎歯列弓のcollapseが重篤であることが示唆された.これにより口唇,口蓋形成術の方法・時期,および抑制矯正など早期マネ-ジメントについても併せて再検討が必要であることが示唆された.
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