1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
63580226
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
久田 隆基 静岡大学, 教育学部, 助教授 (40022214)
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Keywords | 科学的記述力 / カリキュラム開発 / 言語教育 / 科学用語 / 中学校理科 / 理科授業 / 理科教科書 / 化学教材 |
Research Abstract |
本研究では、科学教育の基礎として欠くことのできない科学的言語表現力のうち、科学的記述力についての指導法の確立を図ることを目的とし、昭和63年度は次のような知見を得た。 1.中学校理科の化学領域で取り扱われている科学用語について、その定義文を理科教科書から収集し、整理してみたところ、教科書によって定義のしかたに違いの見られる用語が少なからずあることが分かった。化学的な観点から見て的確な定義文としての標準文の作成を行った。 2.中学校1年理科の化学教材「物質とその変化」の単元を取り上げ、実験・観察において「観察事実」と「推論・判断」とを区別する指導と、それぞれを明確に表現する標準例文の指導を盛りこんだ一単元分の指導案を作成し、その指導案にしたがい、一連の授業を実施した。言語指導の効果について、それらの授業のVTR記録と生徒の記述物から、個々の生徒およびクラス全体の変容などの分析によって、次のような研究結果を得た。 (1)標準文を用いて文章の書き方(文型)の指導を行った授業では、70%以上の生徒が正しい書き方をしているものの、文型指導しない授業では正しく書ける生徒の数は減少する。しかし、対照群の生徒との比較においては、指導の効果は明白にあらわれている。 (2)生徒が書く記述文において、教師が期待する記述内容と文型とは、きわだった相関関係は見られなかった。正しい文型で書けるかどうかは、教師の設問内容の難易に大きく影響されたからだと考えられるので、設問内容に一層の工夫を加えることが次年度の課題として残った。 (3)実験授業の総合的分析結果から、文型の指導を通しての言語能力を高めることによって、論理的思考力も高まるという仮説の成り立つことが、まだ完全ではないが、明確になりつつある。
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